Research Abstract |
椎間板変性は加齢やストレス,遺伝的要素により発生し,退行性脊椎疾患の発症に大きく関与している.特に酸化ストレスはこの椎間板変性と大きく関与しており,その変性機序の解明,あるいは酸化ストレス抑制は椎間板のアンチエイジングに結び付く.本研究は生体内の強力な抗酸化物質であるビリルビンを恒常的に発現することで強い抗酸化作用を有するHeme Oxygenase-1 (HO-1)を高発現するBach1ノックアウトマウスを用いて,椎間板変性過程における酸化ストレス制御による椎間板変性の抑制を評価し,椎間板変性に対する治療方法を開発することを目的とした.本研究では,Bach1ノックアウトマウスの椎間板変性モデルを用いて,酸化ストレス抑制による椎間板変性に対する抑制効果を検討した.Wild typeマウスをコントロールとして,変性椎間板を組織学的,免疫組織学的に比較した.今年度は,生後12週マウスの尾椎椎間板を29G注射針にて穿刺し椎間板変性モデルを作成し,術前,術後1週,2週,4週,8週,12週においてマイクロレントゲン撮影を行い,DHI,%DHIを測定した.また同時期に尾椎椎間板を採取し,組織学的評価,免疫組織学的評価を行った.組織学的評価において術後8週,12週においてBach1ノックアウトマウスの椎間板変性が抑制された.また免疫組織学的評価として抗HO-1抗体を用いて髄核内のHO-1陽性細胞数を測定し,TUNNEL法を用いてアポトーシス細胞の割合を測定した.すべての時点でHO-1陽性細胞数はBach1ノックアウトマウスの方が多く,アポトーシスは術後1週,2週でBach1ノックアウトマウスの方が抑制されていた.本研究により,酸化ストレスを抑制することにより椎間板変性の進行が抑制されることが示され,椎間板変性に対する新しい治療法の開発への足がかりとなった.
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