Research Abstract |
我々はこれまでに,独自に開発したロボットシステムを用いて,正常膝関節および再建膝関節の3次元力学試験を行い,膝の挙動と前十字靭帯の機能について調べてきた.特に,正常膝に関しては,前十字靭帯を前内側線維束,中間線維束,後外側線維束に分けて機能を調べ,前方引き出し力作用時には,伸展位で後外側線維束が緊張し,屈曲するにつれて中間線維束が緊張すること,前内側線維束が全屈曲角度で比較的緊張を維持すること,などを明らかにした.この結果を参考にして,前十字靭帯の機能を別の観点から検討するために,本研究では研究代表者が発案した手法により,前十字靭帯内の張力作用位置を,線維を分離せずに同定することを目指している. 平成20年度は,ロボットシステムに固定されている6軸力センサを用い,様々な荷重状態で前十字靭帯に生じた張力を解析し,張力作用線を求めた.実験後に膝関節のCT撮影を行い,前十字靭帯付着部の3次元形状を求めた,そして,張力作用線と付着部形状の交点を,靭帯張力作用点として求めた.その結果,膝に作用する荷重の種類や大きさによって,張力作用点が靭帯付着部内を移動することが分かった。しかし,荷重の種類によっては解析誤差が増大して,張力作用点が付着部内におさまらない場合があった.基本実験用のシステムを作り,誤差に関して,原因解明と低減手法の開発について検討する必要がある.
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