Research Abstract |
整形外科疾患において,靭帯損傷や変形性関節症などの関節部における疾患の占める割合は高い.スポーツの興隆や高齢化,あるいは交通事故の増加がさらに拍車をかけている,これらの疾患の治療成績を向上させるためには,生体関節そのものの特性を可能な限り解明し,ついで臨床処置の良否について詳細な解析・評価を行って行く必要がある.本研究では膝靭帯の中で最も損傷頻度の高い前十字靭帯に着目し,独自に開発したロボットシステムと荷重作用線の解析手法を用いて,前十字靱帯張力作用位置を大腿骨付着部内で求めた 以前に開発した6軸力センサのキャリブレーション手法を改良を加え,キャリブレーションを,センサの中心ではなく,靱帯張力作用位置近辺で行うことにした.これにより,張力作用位置付近での荷重位置解析誤差を,10mm程度から1mm程度に減少させた.ついで,ロボットシステムにより複合荷重を膝関節に負荷し,その際の6軸力センサの出力を記録した.その後,大腿骨の前十字靭帯付着部近辺の形状を医用CTで計測し,先に求めた靭帯張力作用線と,CTによる靭帯付着部形状の交点を十字靭帯の張力作用点と判断した.屈曲位において脛骨に前方力が作用する際,前十字靱帯の前内側部に荷重作用位置があることが分かった.これは,別途行われた前十字靱帯張力分布の実験結果に一致するものであった.前十字靱帯の再建術において,前十字靱帯を一本の線維として代替する従来再建法の場合,少なくとも屈曲位においては前内側部付着部に大腿骨骨孔を作孔するべきであることが示唆された.また,前十字靱帯を二本の線維として再建する2束再建法において,屈曲位での再建膝の特性を向上させるためには,前内側グラフトを強固に再建することが重要であることが分かった
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