Research Abstract |
【目的】軟骨マトリックスの分解において,MMPおよびアグリカナーゼが重要な役割をはたすが,これら酵素発現における力学的負荷の役割はいまだ不明である。本研究ではヒト軟骨細胞様細胞(SW1353)を用いて周期的伸展負荷(CTS)が転写因子RUNX2およびMMP-13、アグリカナーゼ発現に与える影響を検討した。 【方法】SW1353を5日間単層培養後,ST140(STREX社)を用いて30分間CTS(0,5Hz,10%)を加えた。負荷前後のRUNX2,MMP-13,ADAMTS-1,4,5,9mRNAの発現をRT-PCR,real-timeRT-PCRにより経時的に検討した。また,RUNX2の過剰発現及びsiRUNX2の導入による影響を検討した。 【結果】CTSによりRUNX2 mRNAは1時間後をピークとして約4.5倍に,MMP-13,ADAMTS-4,9はRUNX2より遅れて24時間後より約3倍に発現が亢進した。ADAMTS-5は2峰性に発現が亢進した。RUNX2の過剰発現によりMMP-13,ADAMTS-5の発現が亢進し,siRUNX2の導入によりMMP-13,ADAMTS-5の発現が抑制された。 【考察】OA軟骨破壊に主要な役割をはたすとされるMMP-13は転写レベルでRUNX2の制御を受けていること,アグリカン分解に重要とされるADAMTS-5遺伝子のプロモーター領域にはRUNX2結合領域が存在することが判明している。本研究結果は軟骨細胞に対する力学的負荷がRUNX2発現及びこれに引き続きMMP-13,ADAMTS-5の発現を誘導することを示した。 【研究の意義・重要性】本研究では、軟骨マトリックスの破壊に重要であるMMP-13,あるいはADAMTS-4,-5,-9といったアグリカナーゼが軟骨細胞においてメカニカルストレスによって遺伝子発現が調節される遺伝子であることを示した。本研究では軟骨細胞におけるメカニカルストレスによる基質破壊に転写因子RUNX2が深く関与し、変形性関節症発症の治療ターゲットとなることを初めて示した。さらにこの系を用いて、エピジェネティックな制御あるいはIL-4などの抗炎症性サイトカインがRUNX2発現に抑制的に働くこと、その機序を解明していくことで新規治療法に結びつける
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