2010 Fiscal Year Annual Research Report
変形性関節症軟骨におけるアグリカン分解機構の解明とエビジェネティック制御法の開発
Project/Area Number |
20591780
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
西田 圭一郎 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (80284058)
|
Keywords | mechanical stress / chondrocyte / RUNX2 / MMP-13 / ADAMTS-5 / interleukin-4 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 |
Research Abstract |
【目的】軟骨マトリックスの分解において,MMPおよびアグリカナーゼが重要な役割をはたすが,これら酵素発現における力学的負荷の役割はいまだ不明である。本研究ではこれまでにヒト軟骨細胞様細胞(SW1353)を用いて周期的伸展負荷(CTS)が転写因子RUNX2および剛P-13、アグリカナーゼ発現を亢進させることを示した。今回はヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤がこれらの遺伝子発現変化に与える影響を検討した。 【方法】ヒト軟骨細胞様細胞(SW1353)に対しSTB140(STREX社)を用いて30分間周期的伸展負荷(CTS,0.5Hz,10%)を加え,さらにCTS12時間前にHDAC阻害剤(HDACi,TSA:10nM,MS-275:100nM)を加えた群も同時に作成した.負荷前後のRUNX-2,ADAMTS-5,アグリカン,II型コラーゲンのmRNAの発現をRT-PCR,real-time PCRにより経時的に検討した。HDACiによる細胞障害性についてはMTTアッセイを用いて確認した.さらに免疫染色によりRUNX-2,ADAMTS-5の蛋白レベルでの発現変化についても検討した. 【結果】TsA,Ms-275投与により,細胞活性は下がることなく,HDACi非存在下ではCTSにて有意に上昇したRUNX-2,ADAMTS-5のmRNAの発現が抑制されていた.アグリカン,II型コラーゲンのmRNAの発現についてはHDACi投与群で有意に上昇していた.また免疫染色により,HDAci非存在下で局在的に発現していたRuNX-2,ADAMTS-5もその発現は蛋白レベルで抑制されていた. 【考察】これまでの研究で、軟骨細胞に対する力学的負荷がRUNX2発現及びこれに引き続きMMP-13,ADAMTS-5の発現を誘導することを示した。昨年度は、メカニカルストレスがRUNX2発現亢進を誘導するメカニズムとしてp38 MAPKの関与を示した。さらに本年度はHDAC阻害剤がRUNX2発現抑制を介したアグリカナーゼ阻害活性をもつことを見いだした。 【研究の意義・重要性】本研究では、軟骨マトリックスの破壊に重要であるMMP-3,あるいはADAMTS-4,-5,-9といったアグリカナーゼが軟骨細胞においてメカニカルストレスによって遺伝子発現が調節される遺伝子であること、メカニカルストレスによる基質破壊に転写因子RUNX2が深く関与し、変形性関節症発症の治療ターゲットとなることを初めて示してきた。 今回、HDAC阻害剤がRUNX2発現に抑制的に働くことも判明した。新規治療法の確立のために、今後は動物モデルなど用いたin vivoの検証が必要である。
|