2010 Fiscal Year Annual Research Report
麻酔薬・麻酔法による体内遺伝子、蛋白、代謝物変動の総括的検討
Project/Area Number |
20591820
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
坂本 篤裕 日本医科大学, 大学院・医学研究科, 教授 (30196084)
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Keywords | 麻酔薬 / 遺伝子発現 / 蛋白変動 / 代謝物変動 / 日内変動遺伝子 |
Research Abstract |
麻酔による遺伝子、蛋白、代謝物の変化を総括的に捉えるために、本年度は、昨年度までの全身麻酔下ラットを対象としたゲノミクス、プロテオミクスおよびメタボロミクス解析の追加研究ならびに得られた結果を総括した。ゲノミクスによる検討では、視交叉上核において吸入麻酔薬セボフルランがNAD+の増加をもたらし、これが時計遺伝子であるPeriod 2を抑制し、さらには、麻酔後の概日行動リズムにも影響することを新たに明らかにした。全脳プロテオミクスによる検討では、静脈麻酔薬プロポフォールとセボフルランでそれぞれ数十種類の発現蛋白の変動を認め、ストレス・細胞死関連蛋白発現は同じ動きを示したが、神経発育系、細胞代謝系、信号伝達系においては、麻酔薬間に蛋白発現の強度および持続時間に相違を認めた。また、セボフルラン麻酔はプロポフォールに比して、蛋白発現変化の程度が大きく、また、長時間影響が残った。全脳メタボロミクスによる検討では、イソフルランによる吸入麻酔が対照群に比して脳代謝の変動が少なかったのに対し、プロポフォール麻酔は脳内酢酸濃度をより増加させ、時間経過とともに脳代謝に大きな影響を及ぼし、その影響が長期に残存することを明らかにした。しかしながら、上記の2つの検討結果は、静脈麻酔薬と吸入麻酔薬の全脳への効果が、蛋白発現と代謝物変動では全く異なることが示唆され、上記の時計遺伝子変動以外の脳内遺伝子変動を含めて、遺伝子、蛋白、代謝物変化の関連性につき、系統別のさらなる検討の必要性が認識された.
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Research Products
(6 results)