2010 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴スペクトロスコピーを用いた慢性疼痛の高次脳機能評価法の確立
Project/Area Number |
20591826
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
福井 聖 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80303783)
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Keywords | MR Spectroscopy / 前帯状回 / 前頭前野 / NAA / GABA / Glutamate / 慢性疼痛 / 局所脳神経機能 |
Research Abstract |
慢性疼痛患者では、健常人と比較して前帯状回において、左右平均NAA濃度は、有意に低下していた。痛みの程度と前帯状回おけるNAA濃度に相関性は認めなかったが、痛みにともなう抑うつや不安が強い患者では前帯状回におけるNAA濃度が低下する傾向が認められた。 難治性の慢性神経障害性疼痛患者において、痛みにともなう不安の強い患者は、不安の少ない患者と比べ、前帯状回において有意にNAA濃度が低下していた。罹患側と前帯状回のNAA濃度の方向優位性は、有意差は認めなかった。CRPSの患者においても、前帯状回において、NAA濃度が低下していた。また痛みにともなう不安が強い患者では前帯状回においてNAA濃度が低下する傾向が見られた。慢性神経障害性疼痛患者、CRPS患者では、痛みの情動的側面に関与する前帯状回の神経機能の変調が、病態の成立に関与する可能性が示唆された。 以上から^1H-MRSを用いた局所脳機能評価は、脳内の痛覚処理機構の変化を評価する有用な方法になりうると考えられた。 また予備研究として健常被験者を対象に前帯状回領域において3T MRI装置を用いて、NAA濃度、グルタミン酸濃度、Myoinositol濃度を測定した。GABA濃度はMega-Press法を用いて、各々LCモデルで解析、測定を行った。 健常被験者において、いずれの濃度も年齢や性別に関わらず、ほぼ一定の値であった。また、正常神経細胞の指標となるN-アセチルアスパラギン酸(NAA)の濃度に関わらず、一定の値を示した。 慢性疼痛患者の前帯状回における、脳内の興奮性ニューロン、抑制系ニューロンの神経伝達物質であるグルタミン酸濃度、GABA濃度を含めた研究が、^1H-MRSを用いた慢性疼痛の高次脳機能評価法の確立における今後の課題である。
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