2010 Fiscal Year Annual Research Report
PCOSモデルとして、男性ホルモン投与性同一性障害症例を応用した研究
Project/Area Number |
20591922
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
遠藤 俊明 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (90213595)
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Keywords | 性同一性障害 / 男性ホルモン / 多嚢胞性卵巣症候群 / インスリン抵抗性 / adiponectin |
Research Abstract |
当科でフォロー中のfemale to male transsexuals(FTM)に対して、アンドロゲン投与症例のうち12名の少なくとも1年間以上のテストステロンを投与した症例を性適合手術の際に、血中ホルモン、卵巣組織検査の結果を検討した。 性適合手術時の検査データとして (1)昨年の報告とほぼ同様で、内分泌学的特徴としては、血中総テストステロン、遊離テストステロンは成人男性レベルに上昇している症例が多かった。ただ、LH、FSHに特徴的変化はなかった。一方エストラジオールは、正常排卵周期婦人レベルが確保されていた。(2)糖代謝に対する影響としては、半数の症例でインスリン感受性adipocytokineであるアディポネクチンの低下がみられた。インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IRが上昇している症例は2名で、テストステロン投与による特異的変化かどうかは不明であった。(3)卵巣組織は、polycysticな形態をとるものもあったが、そうでないものもあった。ただそのほかの特徴として、間質の増生が認められるものもあった。黄体など、最近排卵したことを示す所見はいずれの症例でも認められなかった。(4)全症例において、無月経、声の低下、男性型多毛、陰核肥大が認められ、テストステロン効果は十分であった。 結論としては、PCOS状態になるかどうかは、症例の感受性あるいは年齢に依存する可能性が認められた。 当科を受診したFTM症例の分析 (5)当科を受診したFTM症例から、北海道では100,000人中8.2人以上のFTM症例が存在し、今後のフォローの中でその罹患率は上昇するものと思われる。(6)そのFTM症例におけるPCOS症例、インスリン抵抗性の合併、低adiponectin血症の割合は32.%、30.1%、31.0%であった。このことは、PCOSの一般集団における割合が5~10%と考えられており、FTMにおいてはるかに割合が高いことから、FTMにおけるPCOSがハイリスク・グループの可能性がある。また年齢の中央値が24歳であることから、インスリン抵抗性や低adiponectin血症の合併率も一般集団よりも高いと考えられる。このことは、男性ホルモン高値の環境のみならず、インスリン抵抗性のある集団とFTMが何らかの関係が示唆され、今後のさらなる研究が必要と思われた。
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Research Products
(3 results)