2008 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠高血圧症候群の病態解明および発症予防についての研究
Project/Area Number |
20591930
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
関沢 明彦 Showa University, 医学部, 准教授 (10245839)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 志帆 昭和大学, 医学部, 普通研究生 (50384441)
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Keywords | 母体血漿 / 妊娠高血圧症候群 / 予知 / 胎盤 / cell-free RNA |
Research Abstract |
母体血漿中には、胎盤由来のRNAが循環しており、胎盤機能評価への臨床応用が期待されている。そこで、妊娠高血圧症候群(PE)を対象に、胎盤の病態変化を評価する遺伝子マーカーを見出し、PEの発症予知への応用の可能性を検討した。 倫理委員会の承認を得て、PEを発症した妊婦(n=43)とコントロール妊婦(n=41)から採血した。PE患者血中で蛋白濃度が増加すると報告されているVEGF,VEGFR1,endoglin,PLAC1,selectin P,PAI-1,tPA,CRHの遺伝子を標的に、RT-PCR法で発現量を測定した。さらに、妊娠中期の臨床症状がない時期の血液を用い(n=372)、その後PEを発症した症例としなかった症例で、これらの発現量を比較し、発症予知の可能性を検討した。 PE患者血漿中の上記8種類の遺伝子発現量は、全て有意に高値を示し(p<0.001)、その発現量は、分娩後に急減した。各発現量は、収縮・拡張期血圧、蛋白尿の重症度と有意に相関し、8種類の中では、PAI-1、tPAが、尿蛋白量と最も強く相関した。つぎに、妊娠中期血漿中でそれらの発現量を検討したところ、CRHを除く7遺伝子の発現量がその後にPEを発症した群で有意に高値を示した(p<0.001)。ROCカーブを用いた検討で、7種類の中ではVEGFR1、次いでEndoglinが最もPE発症の予知率が高く、7種類を組み合わせることで予知率が更に高まり、5%の偽陽性率で、PEの84%が予知できた。妊娠中期の母体血漿中RNAを定量することで、胎盤の機能的な変化を無侵襲に評価できることを初めて示した。妊娠中期に、PEの84%の発症予知が可能という成績は、従来の報告に比し優れており、本法の有用性を示す結果である。また、妊娠中期に、その後のPE発症とVEGFR1が最も強く関連していたことはVEGFR1の病態への関与の強さを示している。
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