2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規分子標的抗腫瘍薬としてのサリドマイドを用いたオーダーメイド卵巣癌治療戦略
Project/Area Number |
20591957
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
山田 嘉彦 Nara Medical University, 医学部, 講師 (80275346)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 浩 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (40178330)
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Keywords | 卵巣癌 / 浸潤 / アノイキス / 分子標的抗腫瘍薬 |
Research Abstract |
癌細胞が浸潤、転移するための細胞外マトリックスや基底膜を酵素学的に破壊する物質としてウロキナーゼがある。サリドマイドがウロキナーゼ受容体蛋白の発現を低下させ、その結果、細胞増殖・浸潤を抑制することを明らかにした。その作用機序を解明するためにマイクロアレイ実験を行ったところ、下流遺伝子としてhepatocyte nuclear factor (HNF)-1betaを同定した。癌細胞株にsiRNAを導入してHNF1-betaをノックダウンした結果、組織修復、抗アポトーシス、ストレス反応に関連する遺伝子が変動した。特に、卵巣明細胞腺癌株ではその傾向が顕著であった。 さらに細胞内のシグナル伝達物質の変化をDNAマイクロアレイ、ノーザンプロット、リン酸化蛋白アレイおよびウェスタンブロット法、シグナルパスウエイ解析、Gene Ontology解析で網羅的に解析した結果、グリコーゲン代謝と密接に関与していた。これは明細胞腺癌に特徴的な病理形態を示すものと考えられる。 次にHNF-1betaの下流遺伝子の探索から組織再構築と密接に関連する遺伝子群が発見された。これは上皮間葉系移行EMTといってがん細胞が上皮系細胞から間葉系細胞に変化し、浸潤・転移しやすい能力を発揮することと密接に関連している。これにはSlugやSnailといった特徴的遺伝子群が検出された。したがって、サリドマイドによる癌転移抑制にはEMTを制御することにより予後を改善している可能性が示唆された。今後我々はHNF1-betaをターゲットとしたより副作用の少ない分子標的抗腫瘍薬の開発をめざすことを考えている。
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