2011 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣明細胞腺癌の予後因子同定と予後判定バイオマーカー・分子標的治療薬の開発
Project/Area Number |
20591963
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
高倉 聡 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60256401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 愛光 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (20204026)
山田 恭輔 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (30230452)
落合 和徳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20152514)
矢内原 臨 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20349624)
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Keywords | がん / 卵巣 / 分子標的 / 化学療法 / バイオマーカー / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
卵巣明細胞腺癌は本邦に多く化学療法抵抗性で予後不良な疾患である。その予後改善のため本研究では1)臨床情報のデータベース化と臨床的予後因子の解析、2)免疫組織学的所見が独立予後因子となる腫瘍関連遺伝子・蛋白の同定と公表、3)既存分子標的治療薬の効果の検討、4)予後判定バイオマーカーの開発、5)新規分子標的治療薬の開発のための基礎的研究を行うこととした。1)データベースの一部を用い、初回化学療法にCPT-P療法を行った卵巣明細胞腺癌は、単変量解析ではPerformansstatus、臨床進行期、pT分類、残存腫瘍径が予後因子であり、多変量解析ではpT分類を独立予後因子として同定した。また、I期ならびにpT1/pT2で至適な腫瘍減量がなされた症例では長期予後が良好であったこと明らかにした(Kunito S et al,in press)。2)卵巣明細胞腺癌85例と比較対象の漿液性腺癌66例の手術検体のパラフィンブロックから免疫組織学的検討用の未染のスライドを作成し、文献上で既存の分子標的治療薬の標的分子もしくはその発現の有無・強弱・パターンが上皮性卵巣癌予後因子となることが報告されている腫瘍関連遺伝子の内[Cyclin D1、pRb、pl6、p53、p27Kip1、p21Waf1/Cip1、IDO]について免疫組織学的検討(蛋白発現の有無・強度・局在性)を行った。比較対象として行った卵巣漿液性腺癌ではCyclin D1とp27Kipの免疫組織学的所見と予後(無増悪生存期間、全生存期間)との相関が認められたが(Hashimoto T et al,2011)、明細胞腺癌では明らかではなかった。現在、卵巣漿液性腺癌・類内膜腺癌でその強発現が予後不良因子となることを我々が新たに同定したCD147(Ueda et al,in press)について明細胞腺癌症例を対象に検討を進めている。3)卵巣明細胞腺癌日本人症例120例と外国人症例62例の検体を用いてアレイCGHマイクロアレイ解析を行い、日本人でEGFRの増幅が優位に高頻度に認められることを明らかにした。現在、卵巣明細胞腺癌症例と細胞株を用いたEGFR変異解析を行っている。EGFR変異が同定された細胞株を用いゲファチニブの効果の検討を行っていく。4)2)からは卵巣明細胞腺癌の予後と相関する結果は得られなかったが、3)のアレイCGHマイクロアレイ解析の結果より、3q27-29および12p12.2-13.33の増幅と4p15.2-15.32と11q22-25の欠失が予後不良因子であり、特に上記のうち、3-4領域の変化を持つ場合は1-2領域の変化を持つ場合より優位に予後不良であった。今後、この領域に存在する遺伝子に着目し予後判定バイオマーカーの開発を行う。5)卵巣明細胞腺癌ではグリコーゲンが細胞質内に多くみられることに着目し、その機序を解明すべく基礎的研究を行ったところ、卵巣明細胞腺癌細胞株HAC2は低酸素培養により細胞内のグリコーゲン量が増加することが確認され、その機序はグリコーゲン合成促進であることが示された(Iida Y et al,in press)。また、免疫関連遺伝子の網羅的発現解析により、卵巣明細胞腺癌でIL-6が高発現しており、siRNA法にてIL-6発現を抑制したところ、CDDPおよびPTXのIC50は半分以下に減少したため、IL-6は卵巣明細胞腺癌の薬剤耐性と関連が示され、IL-6シグナルは分子標的となる可能1生が示唆された(Yanaihara N, et al,submitted)。
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