2008 Fiscal Year Annual Research Report
前庭神経系の可塑性における前庭神経節の役割に関する研究
Project/Area Number |
20591984
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
下郡 博明 Yamaguchi University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70226273)
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Keywords | 前庭神経系 / 前庭神経節 / CREB / roripram |
Research Abstract |
前庭神経系の可塑性を調べるにあたり、前庭神経節における可塑性のマーカーとなりうるCREBのリン酸化を検討した。一側迷路破壊モデルでは、障害後早期に障害側の前庭神経節細胞にCREBのリン酸化を認め、その後に健側にもCREBのリン酸化を認めた。TTXによる一過性前庭入力遮断モデルにおいても、TTXの効果発現までのタイムラグはあるものの、迷路破壊と類似した陽性所見の出現パターンを認めた。以上の結果に対し、一側外側半規管切断モデルでは、障害後早期に両側性にCREBのリン酸化を認めた。この3種類のモデルに共通して、リン酸化CREBは8時間以内に消失した。外側半規管切断モデルでは、末梢前庭器は形態学的には温存され、末梢前庭機能はゼロにならない点で他のモデルとは異なる。このことが、CREBのリン酸化の発現の差となった可能性を考えた。また、様々な障害に対しても、CREBのリン酸化は一過性であり、速やかに収束していくことが示唆された。以上より、1)障害側の前庭機能が残存すれば、健側の前庭神経節を含めた速やかな可塑性が樹立される。2)CREBのリン酸化が持続して起こることは、ある意味、神経系において非生理的な状態になる可能性がある。これら2点のことが知見として得られた。 さらには、CREBのリン酸化を促進する物質として、抗うつ剤であるロリプラムを一側内耳に投与したところ、両側前庭神経節細胞に左右同等に障害時には認めない継続的なCREBのリン酸化を認めた。このことが、果たして前庭神経系にとって有意義なことであるかどうか検討が待たれるところである。
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Research Products
(2 results)