2009 Fiscal Year Annual Research Report
前庭神経系の可塑性における前庭神経節の役割に関する研究
Project/Area Number |
20591984
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
下郡 博明 Yamaguchi University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (70226273)
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Keywords | 前庭神経系 / 前庭神経節 / CREB / ロリプラム |
Research Abstract |
CREBとはcAMP応答配列結合と呼ばれる脳細胞の核の中に存在する分子であり、CREBのリン酸化はneurogenesisに深く関与しているとされている。昨年度の研究で、前庭神経節細胞において種々の刺激や障害でCREBのリン酸化が生じることがわかった。我々は、障害後の前庭神経系の回復を円滑に行うためにはこのCREBのリン酸化が重要であると考えている。抗うつ剤として開発されたロリプラムは、cAMPを活性化しプロテインキナーゼA(PKA)を活性化することで、核内のCREBのリン酸化を促進させる作用がある。ロリプラムを一側内耳に直接投与することが前庭神経系に与える影響を、前庭神経節細胞内でのCREBのリン酸化や振子様回転検査を通して検討した。 プライエル反射正常、鼓膜正常なハートレイ系白色モルモットの雄を用いた。浸透圧ポンプを用いて直接一側内耳にロリプラムを投与した。術前とロリプラム注入後12時間、36時間に振子様回転刺激によるVORの観察を行った。実験終了時、ネンブタール深麻酔下に断頭して両側前庭神経節を摘出後、p-CREBを免疫染色にて観察した。 ロリプラム注入後36時間の時点で投与側のVOR gainは低下する傾向を認めた。ロリプラム投与後12時間では、両側前庭神経節細胞にp-CREB陽性所見を認め、これは36時間後でも同様であった。しかし、36時間後には前庭神経節細胞に空胞用の変化を認めた。 迷路破壊や半規管部分切断を行うことで前庭神経節細胞にp-CREBの発現は認めるものの、全て障害早期のみであり障害後8時間以内に消失している過去の研究結果から考えると、ロリプラムを内耳に局所投与することで、前庭神経節細胞にp-CREBの発現を継続的に誘導できることがわかった。しかし、同時に前庭神経節細胞に何らかのダメージを与える可能性が、機能面、形態面でも示唆された。このことは、ロリプラムを用いたCREBリン酸化は必ずしも前庭神経系にとっては安1全なものではない可能性があると考えた。
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Research Products
(1 results)