2010 Fiscal Year Annual Research Report
顔面神経麻痺に対するウイルスベクターを用いた治療戦略の基礎的研究
Project/Area Number |
20591985
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
高橋 宏尚 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (90403807)
|
Keywords | 顔面神経麻痺 / HSV-1 / gE欠損HSV / ウイルス伝搬 |
Research Abstract |
ラットの脊髄後根神経節から抽出した神経細胞を培養し、gEが欠損したHSV-1を感染させた。 そのウイルス動態を明らかにし、新しい顔面神経麻痺治療に使用できるウイルスベクターの候補としてHSV-1のgE欠損株を見出した。この結果は、本変異ウイルスは神経細胞内へ長く停滞する特徴があり、今後のベクターを用いた神経成長因子の神経細胞への投与を行う足がかりになることが期待された。また既治療に用いられているステロイドや抗ウイルス剤であるアシクロビルを初感染顔面神経麻痺マウスに投与し、麻痺発現率や麻痺発現期間を検討した。また麻痺発症中の顔面神経組織を採取し、その病理組織学的検討を行い、麻痺抑制のメカニズムを明らかにした。抗ウイルス剤投与群では麻痺発現率、麻痺持続期間においてステロイドおよびコントロールと比較して有意に改善しており、本麻痺モデルにおいては、ウイルスの直接浸潤が麻痺発現に大きな役割を果たしていることが確認された。また臨床の場で用いられる抗ウイルス剤のモデル動物での効果を確認した。HSV-1のgEに注目し、gEを欠損させたHSV-1(以下HSVgE mutant)をベクターになりうる候補と考え、培養神経細胞を用いてウイルスの伝播や拡がりに対する基礎実験を行った。具体的には生後3日のラットの脊髄後根神経節を摘出し神経細胞を分離後、神経成長因子を含む特殊な培養液を用いて3から5日間培養する。神経細胞から軸索が伸張してくる5日目にウイルスを感染させ、ウィルス構成蛋白、具体的にはエンベロープ上のグライコプロテインC、テグメント上のVP16を蛍光染色し、神経細胞内及び軸索に出現する時期および部位を検討するで、HSVgE mutantは細胞から細胞へも伝搬が障害されており、神経細胞間で大きな破壊を伴うことなく、神経に持続的に感染することを明らかにした。
|
Research Products
(7 results)