2010 Fiscal Year Annual Research Report
蝸牛支持細胞の細胞周期再活性化による有毛細胞の再生
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20591989
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
蓑田 涼生 熊本大学, 大学院・生命科学研究部, 准教授 (30284772)
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Keywords | 再生医学 / 内耳 / 支持細胞 |
Research Abstract |
感音性難聴の原因の多くは有毛細胞(HC)の消失によるものである。このHCは鳥類においては消失後、支持細胞が増殖・分化することにより再生するのに対して、哺乳類において支持細胞は生後GO期(静止期)にあるため増殖・分化することはなく、結果としてHCは再生せず難聴は不可逆性である。近年、細胞周期に関する研究が急激に進歩しG0-G1移行のメカニズムも少しずつ明らかになって来た。その鍵となる分子はP27kip1でありCyclin D2、CRM1、KPCを介したP27kip1の分解によりG0-G1移行が起こることが線維芽細胞、リンパ球を用いた基礎研究によりわかってきた。一方27kip1ノックアウトマウスでは蝸牛支持細胞の増殖が生後も持続することが報告されており、生後の正常動物ではP27kip1が支持細胞の増殖のブレーキとして働いていると考えられている。このことから成熟動物においてもP27kip1をダウンレギュレートすることより支持細胞のG0-G1移行(細胞周期への再進入)を引き起こすことができると考えられる。厚生労働省の遺伝子治療のガイドライン(平成13年)により禁止されている「生殖細胞の操作」を伴わないP27kip1のダウンレギュレーションの方法としては、a)P27kip1の分解促進因子であるCyclin D2、CRM1、KPCの過剰発現、b)small interfering RNA (siRNA)を用いたP27kip1遺伝子mRNAのノックアウトが考えられる。本研究においてはa)b)の方法のin vitro、in vivoでの効果について検討する。支持細胞の細胞周期への再進入は単に支持細胞の分裂・増殖のみではなく、鳥類と同様に支持細胞をHCへと分化を誘導できる可能性もあり非常に魅力的な研究テーマである。本年度は正常動物蝸牛におけるP27kip1、Cyclin D2、CRM1、Kpcの発現抑制の効果を見るために、それぞれの遺伝子に対するsiRNAを作成し、エレクトロポレーション法を用いて検討を行った。
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