2010 Fiscal Year Annual Research Report
組織再生工学を用いた人工鼓膜の作製と中耳真珠腫の病態解明
Project/Area Number |
20591993
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
田中 康広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40266648)
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Keywords | 再生医学 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
これまでに中耳真珠腫の病態解明を行う目的として、in vitroでの人工鼓膜の作製を試みてきた。実際に採取した中耳粘膜をin vitroにて粘膜上皮成分とfibroblastに分離培養し、これらの培養細胞を用いて上皮層は単層上皮、粘膜下はコラーゲン内にfibroblastを加えて結合組織を作製し、上皮層及び粘膜下層の2層からなる人工中耳粘膜シートを作製した。さらには外耳道皮膚より採取されたkeratinocyteを分離したのち培養を行い、keratinocyteとECMからなる鼓膜上皮層にあたる鼓膜上皮シートを作製した。この鼓膜上皮シートと中耳粘膜シートがECMを介し、表裏一体となるように融合させ、三次元人工鼓膜を作製した。作製した人工鼓膜にLPSやIL-4, TNF-αなどで刺激を加え、鼓膜上皮の増殖能や分化について検討を行ったところ、PCNAやKi-67などの発現は亢進を認めたものの、特異的な変化は認めなかった。また真珠腫において過剰発現が認められるとの報告があるEGF receptorの発現についてもLPSやIL-4, TNF-αなどによる化学的刺激の反応後、観察を行った。その結果、三次元人工鼓膜においては明らかなEGF receptorの過剰発現は認めなかった。このことは上記のケミカルメディエーターやサイトカインによる刺激のみでは真珠腫の発現を誘発するには不十分であることも考えられた。 一方、中耳粘膜の再生を確認するために中耳粘膜シートを白色家兎のbulla移植する実験を行った。その結果、粘膜を除去したのみの群と比較すると粘膜シートを移植した群では、骨増生や肉芽増生が明らかに抑制されることが判明した。このことは中耳粘膜シートがbullaにおいて再生し、良好なガス換気が行われたことが推察された。
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