2009 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック解析に基づく慢性副鼻腔炎に対する新しい治療戦略の開発
Project/Area Number |
20592004
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉川 衛 Jikei University School of Medicine, 医学部, 講師 (50277092)
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Keywords | 慢性副鼻腔炎 / 自然免疫 / 線維芽細胞 / エピジェネティック解析 / インターフェロン誘導性遺伝子 |
Research Abstract |
慢性副鼻腔炎は、粘膿性鼻漏、鼻閉、嗅覚障害、頭重感などの生活に支障をきたす症状が長期にわたって持続し、かっ約3~4%と比較的高い有病率を示す疾患である。近年、その治療に関しては高い治癒率を得たが、一部の慢性副鼻腔炎患者において、治療を行ってもポリープの再発を繰り返す特徴的な難治症例が存在することが次第に明らかになってきた。このような難治症例の臨床的な背景を検討した結果から、要因として鼻副鼻腔粘膜にウィルス感染に対する脆弱性が存在するのではないかと考えた。本研究課題では、エピジェネティック変化が難治症例由来の細胞におけるウィルス感染に対する脆弱性に影響を及ぼすという仮説のもと、polyI:C刺激時のIFN誘導性遺伝子の発現減弱に関与する分子の同定、およびその機序としてクロマチン構造変化が関与しているかどうかについて患者本人が承諾の上採取した線維芽細胞をもちいて検討を行っている。平成21年度は、polyI:Cで刺激した線維芽細胞におけるIP-10やI-TACなどのIFN誘導性遺伝子の発現をDNAメチル基転換酵素阻害剤(脱メチル化剤)である5-aza-2'-deoxycytidine(5-Aza-CdR)やヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるTrichostatin A(TSA)の処理前後で比較し、転写調節にDNAのメチル化状態やヒストンの修飾状態(アセチル化)が関与しているかを昨年度に引き続き確認した。今後、プロモーター領域を中心にクロマチン免疫沈降法(ChIP)を行いクロマチン構造の変化を確認し、難治症例由来の線維芽細胞に特異的なヒストンの修飾状態を解析する。将来的には、難治性の慢性副鼻腔炎に対する有効な治療として、エピジェネティック制御化合物の創薬をめざすことを目標としている。
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