2010 Fiscal Year Annual Research Report
網膜芽細胞腫に対する腫瘍自己溶解型ウイルスを用いた新規治療の開発
Project/Area Number |
20592047
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉川 洋 九州大学, 大学病院, 助教 (00304808)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米満 吉和 九州大学, 薬学研究院, 客員教授 (40315065)
園田 康平 山口大学, 医学部, 教授 (10294943)
|
Keywords | 網膜芽細胞腫 / 遺伝子治療 / 免疫治療 |
Research Abstract |
前年度の結果から、SeVΔMウイルスベクターのヒト網膜芽細胞腫(RB)細胞株(Y79,WERI-Rb-1)への遺伝子導入が困難であることがわかったため、網膜色素上皮細胞(RPE)に抗腫瘍効果を持つ液性因子(IFN-β)を遺伝子導入し、パラクライン作用によってRBの増殖を抑制する方法を考えた。このことを検証するため、ダブルチャンバーの下側にIFN-βを遺伝子導入したRPEを培養し、その上側のRB細胞の細胞生存率を計測した。RPEに遺伝子導入を行っていないコントロール群と比較し、IFN-βを遺伝子導入した群では、上側チャンバーのRBの細胞生存率が低下し、TUNEL陽性の死細胞数が増加した。これらの結果より、IFN-βを眼内に過剰発現することによって、RBの増殖を制御できる可能性が示唆された。 さらにin vivoでの実験を検討したが、眼内でRB細胞が増殖する動物モデルが確立できなかったために、パラクライン作用による眼内でのRB増殖制御について検証することができなかった。重症免疫不全(SCID)マウスの皮下にRB細胞を接種するモデルを用いて、SeVベクター投与群あるいは非投与群での腫瘍塊の大きさを比較したが、有意な差を認めなかった。その原因としては、in vitroの実験で示されたように、SeVベクターがRB細胞に感染しないことが大きいと考えられた。今後は、RB細胞を安定して眼内に接種・生着させる方法や、遺伝子改変などによってRBが眼内に発症するモデルなど、よりヒトの病態に類似したモデルを開発し、治療実験を進める必要があると考えられた。
|