2010 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-βシグナル関連因子阻害による増殖性硝子体網膜症の治療戦略
Project/Area Number |
20592050
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
木許 賢一 大分大学, 医学部, 講師 (50315339)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉岡 秀克 大分大学, 医学部, 教授 (00222430)
松尾 哲孝 大分大学, 医学部, 准教授 (10284788)
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Keywords | 増殖性硝子体網膜症 / 分子標的治療 / 網膜色素上皮細胞 / 細胞外マトリックス / TGF-β / PKC-δ / PI3K/Akt / Smad |
Research Abstract |
前年度に引き続き、網膜色素上皮細胞(RPE)におけるTGF-β2のシグナル伝達経路に関与する分子、特に、Protein kinase C-delta(PKC-δ)およびPhosphatidylinositol 3-kinase(PI3K)が増殖性硝子体網膜症(PVR)治療の標的分子になるか検討した。RPEにおいてTGF-β2で誘導されるI型およびIII型コラーゲンの発現調節にPKC-δ・阻害剤およびPI3K阻害剤が与える影響をプロモーター活性、mRNA発現、タンパク発現を指標に検討し、TGF-β2/Smad経路とのクロストークに関して解析した。1)RPEをTGF-β2刺激するとPKC-δの発現が上昇し、PI3K p85およびその下流因子のAktが活性化(リン酸化)した。各々の阻害剤は濃度依存的にTGF-β2刺激によるRPEからの各種コラーゲンmRNA(COL1A1,COL1A2,COL3A1)を抑制した。2)TGF-β2で誘導されるCOL1A2のプロモーター活性を各阻害剤は抑制した。一方、COL3A1のプロモーター活性に対しては、明確な結果が得られなかった。3)次にPKC-δ、PI3KとSmadとのクロストークをSmad反応性プロモーター:(CAGA)12を用いて検討したところ、PI3K阻害剤ではTGF-β2で誘導される(CAGA)12の活性が抑制されるのに対し、PKC-δ阻害剤では、全く抑制効果がみられなかった。4)抗ヒト1型コラーゲン抗体を用いた細胞免疫染色で各々の阻害剤はTGF-β2刺激によるRPEからの1型コラーゲン産生を抑制した。5)PI3K/Akt経路の解析をさらに進めたところ、COL1A2プロモーターのSmad結合部位を変異させたコンストラクトの活性化をPI3K阻害剤が抑制した。6)PI3K阻害剤の添加によるSmad7mRNAの発現をreal-time RT-PCRで解析すると、TGF-β2刺激によるRPEからのSmad7の発現をPI3K阻害剤が増加させることがわかった。以上の結果から、PKC-δ、PI3Kの活性化を阻害することで、RPEのコラーゲン産生を抑制でき、PVR治療の標的分子として有望であることが示された。また、RPEからのコラーゲン産生に関してTGF-β2/PI3K/Akt経路はSmad依存的な経路と非依存的な経路が存在すると考えられた。
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