Research Abstract |
われわれは本研究の第一段階として,新生児に模した体重3.5kgの家兎を使用し,TinyPUmpを組み込んだ左心補助(LVAS)による短時間の補助循環を行った(T群),対照としては,本邦で臨床使用し得る最小の遠心 ポンプである日機装HPM-05(ポンプ内充填量25ml)を使用した(H群).回路は無血充填とし,同一の向路を用いてT群で25mL,H群で45mLの総充填量とした.左室心尖脱血,上行大動脈送血にて4時間,流量200mL/分の維持を目標とした体外循環を行った評価項目はポンプ回転数血行動態,血液ガス,ヘモグロビン(Hb),遊離Hb,生化学検査値とした.得られた結果は以下の通り.回転数はT群2042-2204rpm,H群1395-1505rpmを要しT群で有意に高い回転数であった(p<0.01).平均動脈圧はT群65.5-79.OmmHg,H群59.0-71.5mmHg,中心静脈圧はT群2.5-2,9mmHg,H群3.1-3.7mmHg,心拍数はT群225-250bpm,H群267-292bpmで推移し,いずれの血行動態指標も両群間で差を認めなかった.BEはT群-4.7-+0,5mmol/L,H群-6.3-+2.51mmol/L,Sv02はT群66.3-72.1%,H群50.4-60.5%であり両群間で差を認めなかった.体外循環開始前値に対する開始後のHbはT群0.67-0.82,H群0.50-0.60であり全経過を通してT群で高値であった(p<0.05).遊離HbはT群8-33mg/dL,H群8-28mg/dLと差を認めなかった.生化学検査では総ビリルビンがT群0.025±0.010mg/dL,H群0.060±0,036mg/dL,ASTがT群62.3±17.3IU/L,H群137.8±71.31U/LとT群で低い傾向を認めた(それぞれp=0.15,0.13)が,ALT,LDH,クレアチニンは両群間に差を認めなかった,以上をまとめると,TinyPumpは,(1)HPM-05の約1/2の回路充填量であることを反映し,全経過を通して有意に貧血(血液希釈)を軽減することが確認でき,また(2)ポンプヘッドの小型化により高い回転数を要するものの溶血の進行はHPM-05と同程度,(3)生化学検査値もHPM-05とほぼ同等であり,明らかな臓器障害は認められない,といった知見が得られた.これらは本ポンプのin vitroでの使用における妥当性をしめすものである.しかしながら本研究で得られた遊離Hb値は両群ともに30mg/dLに達した,家兎の赤血球は豚や山羊と比較して脆弱であり,家兎を用いた実験系の限界と考えられた.溶血の許容量としては5mg/dL以下が一般的な評価であり,今後ヒトに近い血液データを得るためにも畜産豚を用いた実験が今後必要と考えられた.
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