Research Abstract |
これまでの家兎を用いた補助循環の実績を踏まえ,げっ歯類ではなくよりヒトに近い哺乳類でのモデル作成をめざし3.5~4kgの家畜ブタを用いた左心補助循環のモデル作成を試みた.しかしながら体外循環開始直後に心室細動が必発しこれを十分に制御することができなかった.右房脱血による完全体外循環モデルへの変更も考慮したが,回路への人工肺の組み込みが不可欠となり資金面で困難として断念せざるを得なかった 以上の経緯により家畜ブタモデルの作成は不成功に終わったが,今回の一連の研究で得た知見として家兎補助循環モデルの急性実験の成績を論文としてまとめ,ASAIO Journalに投稿,受理された.論文の内容は以下のとおりである:新生児に模した体重3.5kgの家兎を使用し,TinyPumpを組み込んだ左心補助(LVAS)による短時間の補助循環を行った(T群).対照としては,本邦で臨床使用し得る最小の遠心ポンプである日機装HPM-05(ポンプ内充填量25ml)を使用した(H群).回路は無血充填とし,同一の回路を用いてT群で25mL,H群で45mLの総充填量とした.左室心尖脱血,上行大動脈送血にて4時間,流量200mL/分の維持を目標とした体外循環を行った.評価項目はポンプ回転数,血行動態,血液ガス,ヘモグロビン(Hb),遊離Hb,生化学検査値とした.得られた結果は以下の通り.回転数はT群2042-2204rpm,H群1395-1505rpmを要しT群で有意に高い回転数であった(p<0.01).血行動態に関する各種指標は両群間で差を認めなかった.BE,SvO2に関しても両群間で差を認めなかった.体外循環開始前値に対する開始後のHbはT群0.67-0.82,H群0.50-0.60であり全経過を通してT群で高値であった(p<0.05).遊離HbはT群8-33mg/dL,H群8-28mg/dLと差を認めなかった.生化学検査では総ビリルビンがT群0.025±0.010mg/dL,H群0,060±0.036mg/dL,ASTがT群62.3±17.3IU/L,H137.8±71.3IU/LとT群で低い傾向を認めた(それぞれp=0.15,0.13)が,ALT, LDH,クレアチニンは両群間に差を認めなかった.以上の結果よりTinyPumpが良好な生体適合性をしめすことを確認した.さらにわれわれが今回構築した家兎補助循環モデルはヒト新生児とほぼ同等体格の動物を用いた画期的なモデルであり,今回に限らず新規機器の開発におけるpilot studyでの使用に十分耐えうるものであると自負している
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