2009 Fiscal Year Annual Research Report
組織血流とバイオフィルム形成の創傷治癒における研究
Project/Area Number |
20592096
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
武田 睦 Tohoku University, 病院, 助教 (30333800)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
館 正弘 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50312004)
鳥谷部 荘八 東北大学, 病院, 助教 (90375006)
|
Keywords | 創傷治癒 / 皮膚難治性潰瘍 / バイオフィルム / TNF-α |
Research Abstract |
【背景】慢性潰瘍には細菌が存在するが、生体がコントロールできる負荷は問題にならず、細菌が定着している状態で治癒傾向を示すことが1980年代に報告されている。しかし、創幅や滲出液中の細胞成分の観察に止まり、免疫組織化学的検討はなされていない。創傷治癒過程における好中球の役割として、治癒過程やコラーゲン合成には直接関与していないと考えられてきた。しかし近年、好中球やマクロファージが産生するサイトカインが上皮化を促進するとの推測も報告され、好中球の働きに関して解明すべき点は多数残されている。 【目的】本研究では皮膚潰瘍面への緑膿菌接種により集積する好中球に注目し、好中球が産生する炎症性サイトカインが治癒過程に与える影響について解析を行った。【方法】成熟雄SDラット(12~13週齢)の背側皮膚に6mmパンチで開放創を作成し、緑膿菌(PAO1株5.0×10^7cfu/wound)を接種したのちポリウレタンフィルムで閉鎖環境においた(PAO1群)。同様に緑膿菌非接種創を閉鎖環境においた群を非接種群とした。創作成1、3、6、12、24時間、3、5、7日後に8mmパンチで表皮から皮筋上に至る組織を摘出し、上皮化率、好中球集積、炎症性サイトカイン(TNF-α、TGF-β、IL-1α、IL-1β、IL-6)の産生、発現部位について検討した。白血球は摘出した皮膚組織をホモジナイズした後、比重遠心分離により採取した。 【結果】非接種群と比較し、緑膿菌を接種したPAO1群では、(1)多数の好中球集積と上皮化の促進を認め、白血球数の顕著な増加がみられた。(2)摘出組織において、TNF-αがmRNAレベルおよび蛋白レベルにおいて誘導されていることを確認した。(3)フローサイトメトリーにて集積した白血球を解析した結果、好中球の割合および細胞内TNF-αを発現している好中球の割合が高いことを認めた。創面への緑膿菌接種に伴い創部に集積する好中球がTNF-αを産生し、創傷治癒過程に積極的に関与する可能性が示唆された。
|