Research Abstract |
ヌードマウスでの創傷治癒遅延モデルにおいてβ3インテグリン組み換え型培養表皮の生着率向上効果について検証した. ヌードマウスでの創傷治癒遅延モデルとして,平成21年度の検索結果からマイトマイシンC外用による方法を採用した.すなわち,ヌードマウスの背部皮膚にfull-thickness woundsを2箇所ずつ作製し,皮下にシリコンチャンバー(lower chamber,直径11mm)を装着後,マイトマイシンC溶液(0.5mg/ml濃度,0.2-0.3ml)をガーゼに含浸させたものを5分間,潰瘍部に適用した.PBSで洗浄後,培養表皮を移植した.培養表皮は,β3インテグリン遺伝子導入ヒトケラチノサイト(cell sortingによりβ3陽性率89%)を使用し(コントロール細胞としてβ-galactosidase cDNA導入ヒトケラチノサイトを使用),フィブリンゲル上で5日間培養して作製した.培養表皮移植片は,生検トレパン(直径8mm)で切除し,潰瘍部に30分間静置した後,ソフラチュール,培地を含浸させた創傷被覆材を重層し,シリコンチャンバー(upper chamber)をかぶせ,2針皮膚を含めて縫合,テープ貼付により固定した.培養表皮の生着率向上効果は経時的(1,2,3,4週後)な組織学的検査により調べた.また,マイトマイシンC無処置(MMC処置-)のマウスでも同様の実験を行った.その結果,β3インテグリン組み換え型培養表皮は,1~4週後のすべての時期においてコントロール培養表皮に比べて軽度から中等度に生着率が増加した(MMC処置+<MMC処置-).しかし,現時点では同組み換え型培養表皮の動物実験での有効性を結論づけるにはデータが不十分である.今後さらに実験条件を改善すると同時に実験数を増加して検討する予定である.
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