2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20592124
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長尾 正崇 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (80227991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉栖 正生 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (20282626)
牧田 亨介 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20321812)
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Keywords | 急性中毒学 / 救急医学 / 神経剤 |
Research Abstract |
平成22年度においては、神経剤の血管に対する直接作用として血管平滑筋におけるNO(一酸化窒素)産生を想定し、それに関わるiNOS遺伝子発現の変化を確認した。末梢血管において血管を弛緩させ血圧を低下させるNOの作用と、BIMPの末梢血管に対する直接作用との関連を明らかにするため、NO産生酵素(NOS)のうち誘導型NOS(iNOS)の遺伝子発現を指標とし、AchE阻害作用の影響を排除して循環器系に対する神経剤の直接影響を観察する系として、血管平滑筋細胞に直接BIMPを作用させる実験系を構築し解析を行った。 ラット血管平滑筋細胞を単離培養しLPS刺激を与えると、iNOS mRNA量は継時的に上昇し添加後6時間で最大量を示した。その後徐々に減少を示し、添加後24時間で対照とほぼ同量まで減少した。 LPSおよびBIMPを含む培地を与えた場合において、iNOS発現は刺激後継時的に増加し6時間で最大値となり、24時間経過時には刺激前と同等のレベルまで低下した。LPS単独による刺激の場合と比較すると、iNOS発現量は刺激後1時間で1.32倍、6時間で1.87倍、12時間で2.06倍の値を示し、BIMPがLPSによるiNOS発現を亢進するという結果が得られた。この結果は、BIMPの血管への直接作用として弛緩効果=血圧低下に繋がる事となり、想定した末梢血管への直接作用(血圧上昇)とは異なる結果となった。 しかし別の実験では、同等の実験条件だったにも関わらずLPS+BIMP刺激群のiNOS mRNA量の上昇がLPS群比44%(刺激後6時間)となり、BIMPが逆にiNOS発現上昇を抑制するという結果を得た。この発現上昇抑制は対象として用いた非神経剤有機リン剤DFPにおいても観察された。即ち、この作用は神経剤の作用というよりも有機リン剤による細胞毒性作用の現れであると考えられるが、BIMPに関して同等条件下で相反する効果が見られた理由、また、このiNOS発現変化とラット個体におけるBIMPの直接作用との関係について、実験条件の再検討を含め慎重に判断する必要があると考えられる。
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Research Products
(1 results)