2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経ガス中毒治療における新規パム類似体の解毒作用に関する研究
Project/Area Number |
20592133
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
櫻田 宏一 科学警察研究所, 法科学第一部, 室長 (10334228)
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Keywords | 神経ガス / オキシム / パム / 2-PAM / 4-PAO / BBB / LC-MS/MS |
Research Abstract |
神経ガス中毒におけるリン酸化AChEの復活剤として、現在、2-PAMが臨床では用いられているが、BBBをほとんど通過できないことから、これに替わる新たな解毒剤候補として中枢神経系の解毒効果が期待される4-[(hydroxyimino)methyl]-1-octylpyridinium bromide(4-PAO)をはじめとした数種類の新規化合物についての詳細な検討をこれまで行ってきた。しかしながら、これら化合物はそれ自体の毒性も強く、その毒性機序については未だ明らかになっていない。本年度は、昨年度に引き続き、新規化合物のラット尾静注投与後のECG波形データ等を測定し、心臓の収縮活動における刺激伝導系に対してどのような影響を与えるか、循環動態計測システムを用いた検討を行った。その結果、4-PAO 50μmol/kg静脈投与直後に、洞性除脈が出現しはじめ、HRは1minで有意な減少を示し、同時にRRも経時的に有意な増大を示した。また、ARは投与後すぐに、PDは投与後1minで有意な延長を示し、P波の電位は投与後1minで有意な減少を示した。QTの長さは1minでのみcontrolに対して有意な増加を示したものの、QRSに有意な変化は認められなかった。これらの結果から、洞結節における刺激生成が明らかに抑制され、房室ブロックが発生するなど、心臓の収縮活動における刺激伝導系への抑制効果の強いことが示唆された。また、PAM類におけるBBB通過機序に関する検討として、Amino acid transporterあるいはOCTN2をはじめとした種々のトランスポーターの関与の可能性について、基礎的なデータを採取することができた。さらに、新規パム類似体の各種臓器からのLC-MS/MSによる高感度定量法についての結果をまとめることができた。
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