2008 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子による歯根膜由来間葉系幹細胞の増殖・分化調節機構の解明
Project/Area Number |
20592169
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
石崎 明 Iwate Medical University, 歯学部, 教授 (20356439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯塚 正 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 准教授 (80168062)
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Keywords | 歯根膜 / 間葉系幹細胞 / 転写因子 / 血管内皮細胞 / 骨芽細胞 / 細胞分化 |
Research Abstract |
歯根膜は、歯根と歯槽骨という2つの硬組織間に位置する、解剖学上靱帯に分類される線維性結合組織であり、歯の歯槽骨内への保持と咬合力、生理的な歯の移動、矯正的歯の移動などから生じる様々なメカニカルストレスを受けながらも周囲の基質を石灰化することなく、歯周組織の維持、再生に重要な役割を果たしている。また、歯根膜には咬合圧を知覚する神経組織や、歯根膜組織自体を維持するための栄養血管組織が存在し、これらの組織が協調的に働いて歯根膜の機能を維持している。 最近、歯根膜中には骨様組織、あるいはセメント質様組織を形成しうる間葉系幹細胞様細胞が存在していることが判明した(Seo et al.,2004)。また、我々は歯小嚢由来間葉系細胞を起源とする歯根膜由来線維芽細胞様細胞が血管内皮細胞マーカーを発現することを初めて明らかにした(lbi et al.,2007)。今回我々は、この細胞が線維芽細胞増殖因子[fibroblast growth factor(FGF)]の刺激により血管内皮細胞マーカーの発現が誘導されること、あるいはチューブ様構造物を形成することを明らかにて報告した(Shirai et al.,2009)。さらに、この細胞に骨形成誘導因子[bone morphogenetic protein(BMP)]で刺激をすると、細胞間基質を石灰化することを明らかとして発表した。また、たいへん興味深いことに、FGFとBMPによるこれらの効果はお互いの刺激により減弱されることが判明した。これらの結果は、歯根膜由来線維芽細胞様細胞は血管内皮細胞と骨芽細胞の両者に分化できる幹細胞様能力を持つが、その分化の方向性はFGFとBMPにより相反的に調節されていることを示すものである。 以上のごとく、今年度はFGFとBMPによる歯根膜由来線維芽細胞様細胞の血管内皮細胞様分化と骨芽細胞様分化制御モデルを樹立した。今後、この分化制御モデルを利用して本研究の目的である、歯根膜由来間葉系幹細胞の増殖・分化を制御する転写因子を同定すべく研究を進めたい。
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