2008 Fiscal Year Annual Research Report
末梢炎症時の髄膜傷害因子としてのIL-1βとその産生におけるカテプシンBの役割
Project/Area Number |
20592174
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武 洲 Kyushu University, 大学院・歯学研究院, 学術研究員 (10420598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中西 博 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (20155774)
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Keywords | IL-1β / 髄膜細胞 / アジュバント関節炎 / PGE_2〓 / ミクログリア / 密着結合蛋白質 / 老化 / カテプシンB |
Research Abstract |
本研究の目的であるIL-1βの脳バリア機構、特に髄液・脳関門に対する影響を解明することを目的とし、平成20年度はIL-1βによる髄液・脳関門の障害や白血球の脳内浸潤を誘導するメカニズムを解析した。具体的には、慢性炎症モデルであるラットアジュバント関節炎(AA)ならびにラットの初代培養髄膜細胞を用いて、加齢に伴う密着結合タンパク質発現や白血球の脳内浸潤動態変化にIL-1βの関与について解析を行った。その結果、AAを誘発した若年ラットの大脳皮質において、髄膜にIL-1βならびに誘導型プロスタグランジンE2合成酵素(mPGES-1)の発現が認められた。脳実質内のグリア細胞には抗炎症性サイトカイインのIL-10ならびにTGF-β1の発現が認められた。一方、AAを誘発した中年ラットの大脳皮質では、IL-1βならびにmPGES-1の発現が髄膜に加えて脳実質内のグリア細胞にも認められた。また、IL-10ならびにTGF-β1の発現の発現は低下していた。AAを誘発した中年ラットの大脳皮質では髄膜における密着結合タンパク質であるoccludinならびにZO-1の発現が低下しており、髄膜透過性の増大ならびに血球細胞の脳実質内への浸潤が認められた。次に初代培養髄膜細胞を用いてIL-1βならびにPGE2の密着結合蛋白質に対する影響を解析した。その結果、IL-1βならびにPGE2は各々occludinならびにZO-1の発現を有意に低下させた。一方、IL-10ならびにTGF-β1はIL-1βならびにPGE2の作用を抑制した。さらにリソソーム酵素であるカテプシンBのミクログリアによるIL-1βの産生分泌に対する役割を解析した。クロモグラニンAによる刺激を行ったところ野生型マウスより調整した初代ミクログリアではIL-1βの培養液への分泌が認められたが、カテプシンB欠損マウスより調整したミクログリアでは検出できなかった。以上の結果より、慢性の末梢炎症に対して髄膜-グリア連関は若齢ではニューロン保護的に、中年では逆にニューロン傷害的に作用し、髄膜バリア機能も破綻することが明らかとなった。このことから特に中高年者では慢性の末梢炎症が深刻な脳炎症を引き起こすことが示唆された。また、カテプシンBがIL-1Bの産生分泌に必須であることが強く示唆された。
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Research Products
(10 results)