2009 Fiscal Year Annual Research Report
味蕾細胞分化メカニズムの解明:味細胞と味神経の相互作用を再現する培養系の利用
Project/Area Number |
20592177
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
原田 秀逸 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (60128452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 歩 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (10398290)
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Keywords | 味蕾 / 味神経 / 味覚 / 細胞分化 |
Research Abstract |
本年度は、軟口蓋と茸状乳頭の味蕾細胞分化の差を明らかにしてその情報を培養系の味蕾解析に活用するために、Tlr2(甘味),Tlr3(甘味・うま味)およびT2rs(苦味)の各味覚受容体を発現する細胞でgustducin(味覚情報伝達に関与するGタンパク質の1つ)が発現する割合と、gustducin遺伝子のノックアウトが各領域の味蕾を支配する味覚神経の応答に与える影響を比較解析した。gustducinの発現は、軟口蓋味蕾(SP)では91.2%、茸状乳頭味蕾(FF)では90%のTlr2発現細胞に認められた。また、SPで89.2%、FFで84.8%のTlr3発現細胞、およびSPで86.7%、FFで87.5%のT2rs発現細胞に認められた。このようにgustducinの発現は、SPとFFとで極めて類似しており、いずれの味覚受容体を発現する細胞においてもその大多数で検出された。しかし、gustducin遺伝子をノックアウトすると、SPでは今回解析したすべての甘味および苦味物質に対する応答が著しく低下するのに対して、FFでは、甘味に対してはSPと同様の応答の低下が認められるものの、一部の苦味物質に対して応答が低下しないことが明らかになった。これらの結果は、gustducinがSPでは甘味および苦味、FFでは甘味情報伝達に主要な役割を担うこと、また、FFの苦味情報伝達にはgustducin以外にも他のGタンパク質が関与するか、もしくは全く異なる未知の味覚情報伝達系が存在する可能性を示している。さらに、細胞分化・増殖、機能調節に関与する線維芽細胞増殖因子Fgfについても発現解析を進めることで、有郭乳頭においてFgf1,9,13,14,20が味蕾内の細胞で発現することが明らかになり、これらのFgfが味蕾の細胞増殖、細胞分化に関与する可能性が示された。
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