2010 Fiscal Year Annual Research Report
抗炎症薬開発に向けた唾液蛋白質ヒスタチンの機能解明
Project/Area Number |
20592210
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
今村 泰弘 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (00339136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤波 義明 松本歯科大学, 歯学部付属病院, 助手 (80392801)
王 宝禮 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (20213613)
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Keywords | ヒスタチン / 唾液蛋白質 / 細胞周期 / 炎症 |
Research Abstract |
慢性歯周炎や齲蝕といった歯周疾患の発症は、口腔内細菌が1つの要因とされている。歯周病原因菌等の刺激は、硬・軟・繕合組織の破壊を誘導する。これらは宿主細胞間の相互作用で惹起され、慢性の炎症症状が持続される。唾液蛋白質ヒスタチンは、歯周病原因菌等への抗菌作用や歯周病原因菌由来プロテアーゼ・コラゲナーゼを阻害する。この様に、ヒスタチンは自然免疫関連因子の1つであるが、ヒスタチンの宿主に与える生理的意義はこれまで殆ど明らかにされていない。 これまでに、ヒト歯肉線維芽細胞(HGFs)の増殖・生存はヒスタチンによって促進されることが明らかとなった。これは、ヒスタチンがHGFs内に取込まれ、宿主由来熱ショック蛋白質と結合し、この複合体が細胞周期促進因子CDK/サイクリンの阻害因子p27と結合することに起因した。この複合体は、細胞周期G1/S期への移行に関与することが示唆された。一般に、細胞周期制御は、その関連因子のユビキチン/プロテアソームによる分解を伴うことが多い。そこで、in vitroにおける上記複合体のユビキチン化について、現在詳細に検討している。 自然免疫Toll様受容体(TLR)は、様々な異物の構成成分に応答することで生体防御を担っている。宿主由来熱ショック蛋白質もまた、TLRのリガンドとなり、細胞内シグナルが伝達される。HGFsを熱ショック蛋白質で刺激することにより、MAPキナーゼは活性化され、その下流のIκB-αのリン酸化とその量的減少が認められた。また、HGFsは熱ショック蛋白質の刺激により、炎症性サイトカインIL-6及びIL-8の産生を亢進した。ヒスタチンは、熱ショック蛋白質によるこれらサイトカインの産生を抑制した。以上から、ヒスタチンは抗菌作用のみならず、抗炎症効果を持つ口腔内自然免疫関連因子であることが新たに示唆された。
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Research Products
(1 results)