2010 Fiscal Year Annual Research Report
口腔内細菌をターゲットとした急性冠症候群の新しい治療法開発
Project/Area Number |
20592214
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
佐々木 健一郎 久留米大学, 医学部, 助教 (70320190)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外山 康之 久留米大学, 医学部, 助教 (40412506)
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Keywords | 虚血性心臓病 / 急性冠症候群 / 動脈硬化 / 血管内プラーク / 歯周病菌 / 感染 / 炎症 / 歯周病治療 |
Research Abstract |
本研究は急性冠症候群(以下ACS)発症患者における歯周病罹患の有無とその起炎菌の役割を明らかにし、歯周病への治療介入がACSの初期発症および再発予防に重要であるか否かを検証するものである。 ACS患者へ緊急的心臓カテーテル検査・血管形成術を行う際にインフォームドコンセントが得られた対象者から冠動脈血、冠動脈内プラーク、末梢動脈血を同時採取し、代表的な歯周病起炎菌Porphyromonas Gingivalis(以下P. Gingivalis)の陽性率をPCR法で調べた。連続174対象例の全サンプルにおけるP. Gingivalis DNA陽性率は38%であったが、冠動脈内サンプル(冠動脈血+冠動脈内プラーク)においては58%であった。電子顕微鏡では同菌を確認できなかったが、Z-Phe-Arg-MCA分解活性測定法で分泌蛋白分解酵素Gingipainの活性価を測定したところ、冠動脈内サンプル内で高値を示していた。P. Gingivalis検出陽性患者においては、血中の高感度CRPおよびinterleukin-6濃度が有意に上昇していた。以上より、冠動脈プラークへの歯周病起炎菌P. Gingivalisの直接感染はACS発症の一因となるだけでなく、歯周病への治療介入が心血管イベント発症を抑制する可能性が示唆された。 今回、P. Gingivalis検出陽性および陰性2群間の予後調査をACSの初期治療後平均14.8ヶ月間において行ったが、治療半年後における心血管イベント発生率に統計学的有意差は認められなかった。テレフォンインタビューによるACS治療後の歯科治療歴や除菌状態調査では不明な点も多く見受けられ、詳細な情報を基にした多数の対象者群間における統計学的評価が難しかったことも要因の一つと考えられた。今後も引き続き調査を継続し、長期予後についてさらに検証を加えてゆく。
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