2009 Fiscal Year Annual Research Report
レーザー高吸収体配合う蝕検知液を用いたう蝕の選択的除去
Project/Area Number |
20592247
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
吉川 一志 Osaka Dental University, 歯学部, 准教授 (30309182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟津 邦男 大阪大学, 工学(系)研究科(研究)院, 教授 (30324817)
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Keywords | 歯学 / レーザー / う蝕 / 選択的除去 / う蝕検知液 / PDT |
Research Abstract |
患者の治療時、できる限り少ない侵襲でとどめるという考え、すなわちminimal intervention(MI)のコンセプトが歯科医師の間で浸透しつつある。う蝕治療に関してもMIにより歯の削除量を減らすためにう蝕を染め出すう蝕検知液の改良やう蝕を選択的に削除する器機の開発が行われてきた。我々は平成18年度から2年間、文部科学省科学研究補助金(基盤研究(C))「レーザーの色吸収特性を用いたう蝕の選択的除去」において、半導体レーザーが特に緑と青のう蝕検知液によく吸収され、う蝕を選択的に除去するのに適していることがわかった。その研究過程で、2940nm、すなわち3400cm-1付近にレーザーの吸収特異性を有する第1級アミノ基を有する化合物を配合することによりEr:YAGレーザーの吸収を良くする事ができることが判明した。色による選択性ではあまり吸収特性に影響を受けなかったEr:YAGレーザーであるが、歯質の削除には最も適したレーザーであり、また組織透過型の半導体レーザーよりも表面吸収型であるEr:YAGレーザーの方がより安全に、かつ効率的に選択的う蝕除去が可能になるのではと考えられる。今回、我々はう蝕除去に最も適しているEr:YAGレーザーの第1級アミノ基を有する化合物に対する吸収特異性に注目し、この化合物を配合したう蝕検知液を作成し、う蝕部をレーザーマーカーにより染色し、染色された部分のみを削除することを試みる。平成21年度は除去効率の測定を行った.ウシ歯象牙質を5×5mm,厚さ1mmに成型し,表面を除いてネイルヴァーニッシュでコーティングを行った後,0.1M乳酸に24時間浸漬し,人工う蝕象牙質を作製した.平成20年度に設定した各濃度の無色と緑色のう蝕検知液を滴下し,Er:YAGレーザーを100mJ,1ppsの条件で10パルス照射し,形成された窩洞を3次元形状測定装置にて測定し,深さ,除去体積を測定した.同様の条件でう蝕検知液を滴下していない人工う蝕象牙質に形成された窩洞を測定し,得た数値をコントロールとした.算出したデータは一元配置分散分析とScheffeの検定で統計処理を行った(n=5).除去効率については,う蝕検知液のレーザー高吸収体の濃度が増加すると窩洞の深さ,除去体積量共に増加する傾向が認められた.レーザー高吸収体を4.0%配合するう蝕検知液を使用した場合,窩洞の深さはコントロールと比べて有意に高い値を示し,また窩洞の除去体積量はその他の濃度と比べて有意に高い値を示した(p<0.05).同じ濃度のレーザー高吸収体を配合する無色と緑色のう蝕検知液を滴下した人工う蝕象牙質にEr:YAGレーザー照射した場合,窩洞の深さ,除去体積量に有意差は認められなかった.
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