2010 Fiscal Year Annual Research Report
線維芽細胞増殖因子が歯髄幹細胞の機能と分化を制御する
Project/Area Number |
20592294
|
Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
呉本 晃一 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (90319583)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 照太 大阪歯科大学, 歯学部・附属病院, 教授 (10103110)
|
Keywords | FGF / 歯髄幹細胞 / 象牙質再生 |
Research Abstract |
本研究目的は,線維芽細胞増殖因子(FGF)が口腔由来の幹細胞の機能と分化に関する役割を解明し、バイオ人工歯根開発/臨床応用へ発展させることにある。本研究には、海外研究協力者であるロサンジェルス子供病院ベルーシ准教授より供与を受けたFGFR2b遺伝子ノックダウンマウスを用いて、FGFR2bシグナルの減弱による歯根形成時の表現型が生じるメカニズムについて組織学的、分子生物学的に検討を行った。 実験条件として、マウスの前歯の萌出が完了する出生14日後からFGFR2b遺伝子のノックダウンを開始し、その期間は2・4・8週間とした。前年度の結果から、FGFR2b遺伝子ノックダウンによりマウス切歯の根尖部には、新たにエナメル質が形成されないことが明らかとなっている。これは、FGFR2bが減弱した状態では、口腔粘膜上皮由来幹細胞(dental epithelial stem cell、DESC)塊であるcervical loopは残存するものの、口腔上皮由来幹細胞の、エナメル芽細胞前駆細胞(ameloblast progenitor cell、APC)への分化が抑制されることによることであることが明らかとなった。 また、出生後14日後から出生後42日後まで(4週間)FGFR2b遺伝子のノックダウンを行った後にFGFR2b遺伝子ノックダウンを止めると、出生70日後で上顎前歯が一旦、抜け落ちるものの、出生91日後には、再萌出を始め、出生120日後に、元通りに生え揃うことが明らかとなった。これは、FGFR2bシグナルが減弱した状態でもDESCsは生存・維持すること、FGFR2bシグナルが復活することで、DESCsのAPCsへ、さらにはAPCからエナメル芽細胞への分化が再開され、歯が再び生え揃ったと考える。この結果は、FGFR2bシグナルはAPCの恒常性維持には関与しないことを明らかにした。また、FGFR2b遺伝子減弱下では、上皮系マーカーである、Sonic hedgehogやSprouty2の発現が抑制されることも明らかとなった。 今後、FGFR2b遺伝子と、これらの遺伝子のかかわりを明らかにすることが、DESCsのマーカーを探索するうえで重要であると考えられる。
|