Research Abstract |
咬合支持域の消失した患者の補綴前後の唾液中のαアミラーゼ(AMY),コルチゾール(Cts),免疫グロブリンA(SIgA)および神経成長因子(NGF)を測定し,咬合支持の喪失を補綴装置により回復した場合の身体に及ぼす影響をストレスと免疫機能の関係を明らかにすることにより,咬合崩壊に対する義歯の効果を科学的に立証しようとするのが本研究である 1.前年度に得た患者からのデータは個人差が多く,唾液中のバイオマーカー種類の反応の違いを調べるため基礎的データとして正常有歯顎者に対して次の実験をおこなった (1) 実験的咬合床を用いて口蓋に一定の疼痛刺激を与え,AMY活性,Cts濃度,SIgA濃度およびNGF濃度の反応の違いをみた.その結果,AMY, Ctsは痛みの指標であるVAS (Visual analogue scale)と相関が認められたが,SIgA濃度,NGF濃度とは一定の関係は認められなかった (2) 口蓋被覆部位を変えて不快感をVASで表し,AMY活性,Cts濃度,SIgA濃度およびNGF濃度の反応の違いをみた.その結果,AMYは不快の程度と正の相関が見いだされたが,SIgA濃度,NFG濃度は口蓋被覆部位により有意に変動したが,不快の程度との関連は認められなかった 2.義歯に対して何らかの不満を訴えて来院した患者の中から咬合支持域がEichnerの分類B2~B4およびC1であった21名につき,同一日の次の時点で唾液の採取を行った.(1)初診時,研究に対する同意を得られた直後,(2)治療直前,(3)不快症状を除く治療直後,また義歯を装着した患者16名につき,義歯装着直後および不快事項が消失した時点で唾液採取を行った.1局部床義歯装着による咬合支持回復の効果AMY, Cts, SIgAともに義歯装着直後に有意に上昇し,1カ月以降有意に下降した.このことは義歯を装着することが患者にとってかなりのストレスとなっていると考えられた.また義歯によって咬合支持域を回復した大きさが大きいほどCts濃度,NFG濃度の変化が大きい傾向を示したが統計的に有意差を見いだせなかった
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