Research Abstract |
歯科用金属に対して長期間に渉って安定に接着性耐水性を維持できる新しいタイプの軟質接着性レジンシステムの構築を目的として,軟質接着性レジン自体の耐水性を向上させるために,フッ素系のモノマーとポリマーを組み合わせたフッ素系の軟質接着性レジンシステムを試作し,詳細に検討した. 1)フッ素系のメタクリル酸エステルモノマーとして,ポリマーが撥水性や耐汚染性である2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(TFEMA)を用いた.TFEMAを懸濁重合させてTFEMAポリマー(PTFEMA)の微粒子粉末を調製した. 2)フッ素系のTFEMA-PTFEMA系接着性レジンを用い,チイランモノマーで表面処理した貴金属を突き合わせ接着させて,熱サイクル負荷後の引張接着強さを測定した.TBBOを重合開始剤とした場合には吸水率の低下は認められなかった. 3)フッ素系粉-液タイプの接着性レジンの重合硬化速度を高めるために,モノマー液成分としてTFEMAの代わりにMMAを用いたMMA-PTFEMA/TBBOレジンを試作した.硬化レジンの吸水率は著しく減少したが,硬化レジンのフッ素含有率が低下したことにより,TFEMA-PTFEMA/TBBOレジンの場合と比べて,必ずしも明確な傾向を示さなかった. 4)モノマー液中のフッ素含有率をさらに高めるために,分子内にフッ素原子を6個有する1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート(HFIPMA)を用いて,同様に懸濁重合によりHFIPMAのポリマー(PHFIPMA)微粒子を合成して,HFIPMA-PHFIPMA/TBBOを試作したが,重合硬化性が悪いので重合開始剤をBPO-アミンに代えたHFIPMA-PHFIPMA/BPO-アミンレジンを用いて,長期的接着耐水性を検討した.重合硬化速度はやや不十分ではあるが,長期的な接着耐水性は良好であり,また柔らかい硬化物が得られるので軟質の接着性レジンとしての可能性が示唆された. このようにフッ素含有率を上げると重合性が低下する傾向が認められたが,メタクリレートの代わりにアクリレートを導入することでフッ素含有率と重合活性の向上が期待できるので,今後の検討課題としたい.
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