2010 Fiscal Year Annual Research Report
顎骨のリモデリングを制御する補綴誘導ストレスの分析
Project/Area Number |
20592307
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
若林 則幸 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 准教授 (00270918)
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Keywords | メカニカルストレス / 骨吸収 / 義歯 / 粘膜 / 粘弾性 / 歪み / 咬合 / 有限要素 |
Research Abstract |
補綴装置による痛みや損傷とその予後を予後を左右する原因となる.ヒトの顎堤粘膜の動的挙動を検討,分析し,軟組織内部のストレスと歪みの動態を明らかにした. 荷重ピンによる負荷,除荷の制御と粘膜の変位量を感知するセンサを含む,口腔内における粘膜変位量測定システムを用いて,上顎片側大臼歯が欠損した被験者の欠損部顎堤粘膜に対し一定荷重を10秒間負荷し,除荷後20秒間の変位の変化を記録した.各被験者の顎堤粘膜と顎骨の三次元有限要素モデルを歯科用コーンビームCTの断層画像を基にトレース法で構築した.粘膜は均質な等方性弾性体とし,非線形特性である粘弾性を付与した.粘弾性性質は,緩和弾性率G(t)=G_0×EXP(-t/τ)の式を応用し,被検者ごとの初期弾性率(G_0)と緩和時間(τ)を,測定データを基にしたカーブフィット法から算出して求めた.分析は,粘膜内部の主応力および主歪みの大きさと方向を対象とした. 持続荷重や繰り返し荷重下で最大歪みが増加・蓄積される一方,最大応力はわずかに減少した.この結果は,粘弾性体の主要な性質である応力緩和特性によると考えられ,粘膜のクリープ現象が組織内の応力集中を他の部位に分散させる自己防衛の役割を担うものであることが示唆された.そして,繰り返し荷重により粘膜表層の圧縮歪みが徐々に蓄積される現象からは,義歯床下粘膜の痛みや損傷が,単発の荷重よりも咀嚼運動の繰り返しと深く関係していることが示唆された.顎堤粘膜は本来義歯床を介して咬合力を受け止めるための構造を有しているわけではなく,義歯の設計においてはその特異な力学的挙動を考慮する必要がある. 補綴診療が安全で望ましいストレス環境を誘導し,高齢者の口腔機能と形態の保全を目指すためには,治療後の生体内部におけるメカニカルストレスの分析が不可欠であることが示唆された.
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Research Products
(13 results)