2009 Fiscal Year Annual Research Report
新たな痛みの定量評価法の確立と慢性口腔顔面痛における下降性疼痛調整系の役割
Project/Area Number |
20592319
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
千葉 雅俊 Tohoku University, 病院, 講師 (70261526)
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Keywords | 痛み / 口腔顔面痛 / 下降性疼痛調整系 / 慢性疼痛 / 知覚閾値 / 痛覚過敏 / Pain Vision / 破局的思考 |
Research Abstract |
慢性疼痛患者を対象に痛みの強さをPain Visionで「痛み度」として測定及び主観的な痛み評価法である数値評価尺度(NRS)で自己評価し、以下の結果を得た。 1:NRSが低い患者では、痛み度とNRSとの間に相関がある一方、NRSが高い患者の中にNRSに比して痛み度が低い患者群が存在した。逆にNRSが低く、痛み度が高い患者は稀であった。 2:このNRSと痛み度が乖離した患者の多くは、痛みに対して破局的思考を持っていることが心理テストで明らかになった。このことは、NRSやVASが感覚としての痛みの強さを反映しているというよりも痛みに対する情動要因も含んだ数値であることを理解する必要があることを示す。さらにNRSと痛み度が乖離する慢性疼痛は、burning mouth syndromeや精神疾患を合併、罹患期間が長い患者に多い傾向があった。 3:こうした「痛がり」の患者でも比較対象があると痛みの感覚成分を測定することは可能であり、Pain Visionによる痛み度は、慢性疼痛でも有用である。 4:NRSと痛み度が乖離した患者も治療によってNRSが低下すると痛み度も低下し、破局的思考も改善した。このことから本来、破局的思考を持つ者が慢性疼痛になるとは限らない、すなわち慢性疼痛になる過程で破局的な思考をするようになった可能性もあると考える。 5:従来、痛みが強いとされてきた神経障害性疼痛患者の痛み度は、予想外に高くはなかった。神経障害性疼痛、それまで経験したことのない性質の痛みが遷延することの不快感や不安等が主観的な痛みを悪化させており、神経障害性疼痛患者の痛みが感情としての痛みの性格が強い可能性があり、さらに検討を進めている。
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