2010 Fiscal Year Annual Research Report
難治性神経疾患の予防、修復への神経栄養因子型治療法の確立
Project/Area Number |
20592374
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石川 敏三 山口大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90034991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
仲西 修 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50137345)
伊吹 京秀 京都府立医科大学, 医学系研究科, 講師 (90232587)
由本 美佐 山口大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (70379957)
松本 吉洋 山口大学, 大学院・医学系研究科, 学術研究員 (30364152)
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Keywords | 慢性疼痛 / 脊髄可塑性 / グリア応答 / 神経栄養因子 / 磁気刺激治療 |
Research Abstract |
さまざまな難治性神経疾患にしばしばうつ・不安様行動が併発し、その発症機構がほとんど不明のままで、医療のみならず社会的にも急務な課題である。今年度は、慢性疼痛ラットで情動性異常を観察し、また脳内神経回路の細胞応答からも、記憶・認知・感情機能に関与する部位で可塑的状態が起きている可能性をシグナルから見いだし、その様式解明および治療に向けて特定分子の探索を進めている。 神経障害性疼痛は、ハロタン麻酔下でラットの歯髄神経を弱く圧迫したモデルとする。末梢からの繰り返し刺激による細胞損傷周囲、隣接部位のグリア反応はGFAP (astrocyte)やIba-1 (microglia)をマーカーとし、さらにグリア関連リン酸化産生物p-38MAPK、s100βの脊髄局所的,経時的変化よりその機構を解明する。特に、介在神経の豊富なRexed III付近を中心に選択的細胞脆弱性との関連について検討する。候補化合物を投与して鎮痛効果を調べると共に、細胞修復の面で詳しく調べるため、1、3、7、14、21、28日目に延髄を摘出、凍結切片を作成する。また、培養系実験により、様々な細胞の機能評価の確立を目指す。その系で神経栄養培養ラット大脳皮質、海馬神経細胞、副腎髄質由来株化細胞PC12を用い、神経栄養因子の主要な作用経路であるMAPキナーゼ経路、PI3キナーゼ経路、PKA/cAMP経路について活性化(リン酸化の有無)イムノブロット法で解析する。 本研究から、神経栄養因子が神経細胞傷害の予防及び障害後の修復に極めて有用であることを、培養細胞および脊髄・脳神経回路の細胞実験から突き止めた。ポリフェノール化合物、および細胞活性を高める可能性があり我々が開発した電磁刺激治療器が鬱状態、神経過敏を軽減する可能性を見いだした。したがって、慢性痛の分子機構解明、つまり神経-グリア作用の時系列的・局所的変化を解明し神経栄養因子による治療応用に基礎的知見を得た。よって近い将来に、神経栄養因子様活性をもつ化合物や磁気刺激によって慢性疼痛の治療が可能になれば、本研究の臨床への貢献度はきわめて高いと考える。
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