Research Abstract |
ミダゾラムには,アデノシンのuptake inhibitorとしての作用があり,それにより中枢でのアデノシンが増加することが考えられる.一方,アデノシンには催眠や鎮痛に影響を与えると考えられている. 今回ミダゾラム0.06mg/kgの静脈内投与により,鎮静レベルは徐々に深くなり,投与後30分で鎮静状態の評価に用いたBispectral Indexも最低値を示し,刺激に対する反応も全例で陰性となった.鎮静からの回復には,Bispectral Indexが70分,循環が40分,呼吸が80分,指示行動,認識力,精神運動機能,平衡機能が90分以上を要した.また,アデノシンの前期物質であるアデノシン三リン酸単独投与では鎮静効果は認められなかったが,ミダゾラムム0.06mg/kgとアデノシン三リン酸を100μg/kg/分で投与することにより,ミダゾラムの鎮静効果は増強された.一方アデノシン受容体の拮抗作用を有するテオフィリン製剤であるアミノフィリンを投与することにより,ミダゾラムの鎮静効果は速やかに拮抗され,アミノフィリン投与後Bispectral Indexが1-2分,指示行動が5分,認識力が10分,循環が10分,呼吸が5分,精神運動機能,平衡機能が30分で回復し,またアデノシン三リン酸により増強された鎮静効果も拮抗された.ミダゾラムの鎮静効果は,gamma-aminobutyric acid受容体を介したものと考えれレているが,鎮静作用がアデノシンの前駆物質であるアデノシン三リン酸により増強され,アデノシンの拮抗作用を有するアミノフィリンにより拮抗されたことにより,ミダゾラムの鎮静作用にはgamma-aminobutyric acidだけではなくアデノシン受容体が関与している可能性が示された.
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