2010 Fiscal Year Annual Research Report
薬物性口内炎におけるプロスタグランジンの役割の解明と新しい口腔ケア法の確立
Project/Area Number |
20592416
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
河上 智美 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (30277595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
苅部 洋行 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50234000)
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Keywords | 歯根形成 / 小児 / 口内炎 / 悪性腫瘍 |
Research Abstract |
小児期悪性腫瘍の治療の際に用いられる抗腫瘍薬の副作用として口内炎や歯の形成障害が認められる。今回は、悪性腫瘍の治療の際に口腔内でどのような変化が起こるかを調べるために、化学療法でよく使用される抗腫瘍薬のうちアルキル化剤のシクロフォスファミドを選択し、成長期のマウスを用いて舌の変化、歯根形成および歯周組織に対する影響を検討した。研究はM1歯根形成開始時期にあたる小児期のマウスを用い、実験群にはシクロフォスファミドを30,50,100,200mg/kgとなるよう腹腔内投与した。薬剤投与後4,8および12日後にネンブタール深麻酔下にて潅流固定し試料を採取した。採取された舌や顎骨などの試料を固定・脱灰など処理後、HEおよび免疫組織学染色を行った。また歯根の形態変化を観察するためにマイクロCT撮影も行った。薬剤の影響は濃度依存的に体重の増加抑制としてあらわれた。また、マイクロCT撮影より歯根形成の抑制が確認された。HE染色では、実験群の下顎臼歯歯根部(M1)の象牙芽細胞は形態が変化して象牙質の形成量も減少して不規則となっていた。経日的に歯根長の短縮が明瞭となった。また歯根周囲の歯根膜繊維の走行も乱れを認めた。軟組織である舌では、低濃度作用群では重層扁平上皮層の構造は大きな変化は認めなかったが、高濃度作用群では構造の崩壊を認めた。上皮組織のマーカーとしてサイトケラチンを用いた免疫染色を行ったところ、歯根形成先端部のヘルトヴィッヒ上皮鞘の形態が変化しており、歯根形態の異常や歯根長短縮に関与していると考えられた。シクロフォスファミドの副作用として歯周組織や口腔軟組織に影響があらわれることが示唆され、悪性腫瘍の治療時には口腔にあらわれる症状についても説明し、口腔ケアに注意が必要であると考えられた。
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