2008 Fiscal Year Annual Research Report
エナメル質の脱灰・再石灰化メカニズムの結晶学的解析
Project/Area Number |
20592478
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Research Institution | Aichi Gakuin University,Junior College |
Principal Investigator |
犬飼 順子 Aichi Gakuin University,Junior College, 歯科衛生学科, 准教授 (40319190)
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Keywords | エナメル質 / 結晶性 / 再石灰化 / 脱灰 |
Research Abstract |
口腔内で常に繰り返されている歯の脱灰・再石灰化は、歯のエナメル質のリン酸カルシウム塩のほとんどがハイドロキシアパタイトであったものが、脱灰によってその構造をくずし、再石灰化によりくずれた構造を再構築していくものと考えられる。しかし、脱灰、再石灰化はどちらも相対的グレイ値を用いたミネラル濃度は同一であっても、その結晶学的構造は果たして同一であるのかは現在明らかにされていない。当該年度は、まずエナメル質のモデルとして結晶性が比較的高く、反応性の高い純度の高いカーボネートハイドロキシアパタイトをClasenらの方法により調整し、50〜100μmの粒度になるよう分粒し、人工エナメル質とみなした。つぎに300μmのナイロンリングを口径0.5μmのメンブレンフィルターではさみ、人工エナメル質10mgを封入した。リング中に現在再石灰化の評価に一般的に用いられている脱灰液(0.1M乳酸、3mM CaCl_2, 1.8mM KH_2PO4, KOHでpH4.5になるよう調整)に3日間浸漬し、蒸留水で浸漬後、再石灰化溶液(20mM Hepes, 1.5mM CaCL_2, 0.9M KH_2PO_4, 130mM KCl, pH7.0)に1週間および2週間浸漬した。浸漬した試料を10mA, 2kV, 5minの条件でソフテックス社製CMR-2を用いて軟X線写真により相対的グレイ値を計測した。さらに、試料をナイロンリングから取り出しFTIRスペクトルを測定し、結晶相の同定をおこなった。以上の研究により、相対的グレイ値の増減と結晶相の変化は、ハイドロキシアパタイトのみの結晶相でなく、ハイドロキシアパタイトへの転化の前駆体ともなりうる他の結晶相の混在が認められた。したがって、脱灰再石灰化の実験系においては相対的グレイ値だけでなく、結晶相についても考慮する必要性があると考察でき、今後の脱灰・再石灰化の試験法の一助となる結果が得られた。今後はさらに実験条件を変化させ、ヒトエナメル質を用い臨床に直接結びつく研究を予定している。
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