2009 Fiscal Year Annual Research Report
がん化学療法における塩酸セビメリン含嗽の口内炎予防効果の検証
Project/Area Number |
20592529
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉川 千鶴子 Fukuoka University, 医学部, 講師 (60461539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 恵美子 福岡大学, 医学部, 准教授 (30461536)
須崎 しのぶ 福岡大学, 医学部, 助手 (20469381)
山下 千波 福岡大学, 医学部, 助手 (30469382)
川口 賀津子 福岡大学, 医学部, 助手 (40469383)
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Keywords | がん化学療法 / 塩酸セビメリン / 口内炎予防効果 |
Research Abstract |
研究目的:本研究で含嗽薬として使用するセビメリン塩酸塩は、唾液分泌を促し唾液の自浄作用により口内炎予防を図ろうとするものである。そこで、外用として使用することの妥当性を検証することを目的に、化学療法による口腔粘膜障害の実態調査を後ろ向きと前向きの両方で行い、口腔粘膜障害と唾液分泌との関連を検討し。 研究方法:後ろ向き調査は、大学病院で過去2年間にがん化学療法を受けた入院患者の診療録の看護記録の中から、口腔アセスメント評価の記載内容の分析を行った。前向き調査は、外来化学療法を受けている患者83名を対像に、がん化学療法による影響として、一般状態と口腔内の状態(OAG評価項目に沿った質問項目)で構成された質問紙を作成し調査した。 結果:入院診療録は170冊の内、記録不備のものを除いた157冊を分析対象とした。何らかの口腔粘膜の障害がみられたのは、悪性リンパ腫102例中73例(71%)、急性白血病25例中22例(88%)、消化器がん30例中17例(57%)であった。発症部位は、舌が最も多く、白斑、舌苔、亀裂、味覚障害がみられOAG Grade 2で経過する症例が多かった。Grade 3のケースは、舌の障害が先行して、口腔粘膜、歯肉、口唇へと悪化していた。口腔粘膜障害の発症時期は、疾患別、レジメン別の比較において差はなく、4日目が最も多かった。先行研究より早い時期から口腔粘膜障害が始まっていることを確認した。 外来化学療法を受けている患者の調査票は、配布83部に対し73部回収した(回収率88%)。対象患者は、男性40名、女性33名、平均年齢63(SD9.4)で、消化器がん、悪性リンパ腫、肺がん、乳がん等であった。消化器がんは5Fuベースのレジメン、悪性リンパ腫はR-CHOP療法、肺がん、乳がんはCBDCA、TXL使用のレジメンであった。身体症状により日常生活に支障をきたしている人は30名(41%)で、食欲低下など食事への影響が51名(70%)であった。口腔内の状態は、味覚障害が50名(68.5%)に見られ、次いで、口腔乾燥症状と粘膜障害が30名(41.%)、舌が乾燥して食べにくい28名(38%)、乾燥して嚥下しにくいが22名(30%)に見られた。肉眼的な舌の変化を自覚している人は17名(23%)であったが、味覚障害として自覚していた。 がん化学療法による口腔粘膜の障害は、初期の段階で、まず舌に症状が表れ、白斑、舌苔、亀裂、味覚障害として進行する。診療録には、口腔乾燥症状の記載は少ないが、外来患者の調査で、患者の自覚症状として口腔乾燥症状の比率が高く食べ物の食べにくさや嚥下しにくさを感じていることが分かった。以上より、唾液分泌を促す含嗽薬による口腔ケアの必要性が実証できた
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