2009 Fiscal Year Annual Research Report
出産・育児を通じた女性のSOC(首尾一貫感覚)の変化
Project/Area Number |
20592602
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
松下 年子 Saitama Medical University, 保健医療学部, 教授 (50383112)
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Keywords | 首尾一貫感覚 / SOC (sense of coherence) / QOL / 妊産婦 / 出産と育児 / 育児 / 精神保健 |
Research Abstract |
総合病院の産科外来および産院、産科クリニック、計7施設の妊娠初期の妊婦を対象とした郵送式質問紙調査であったが、最終対象者は2009年3月の時点で478名となった。質問紙はQOL評価尺度であるEuroQolの5項目法と視覚評価法(VAS)、さらに、坂野ら(1994)の気分感情状態調査票、SOC評価票を含み、これら尺度の(1) 妊娠初-中期、(2) 妊娠後期、(3) 出産直後、(4) 出産後1か月時点の計4回にわたる経時的変化は以下のとおりであった。質問紙の記入は(5) 出産後4か月、(6) 出産後1年と続いたが、今回の分析対象は(1)から(4)までとした(分析該当者の平均年齢は31.6±5.1歳、平均出産回数は0.6±0.9回)。まず、4時点にわたるQOL得点は、平均効用値と視覚評価法ともに有意に変化し、妊娠初-中期から後期にかけて向上、出産直後に一気に低下、出産後1か月の時点で再度向上するというパターンであった。一方、気分感情状態は、緊張・興奮が妊娠初-中期から後期、出産直後と低下し、出産後1か月の時点で再度高まる傾向が認められた。爽快感は妊娠初-中期から後期、出産直後と漸増し、出産後1か月で再び低下、疲労感は初-中期から出産後1か月にかけて漸減、抑うつ感は出産直後までは漸減し出産後1か月の時点で再度高まった。不安は出産直後に一気に低下し、その後再び高まる傾向にあった。最後に、SOC得点は妊娠初-中期の時点より一般人口(女性)のそれよりも高値であり、その後大きな変動は認めなかった。以上より、SOCは比較的安定した特性であること、そのようなSOCを変化させるほどに妊娠は影響力の大きいライフイベントであること、その後出産後1か月までの短期問で、妊産婦の感情やQOLは大きく変動することが示唆された。育児ノイローゼをはじめとする産婦および育児女性のメンタルヘルス上の危機に向けた、積極的なアプローチが求められよう。
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Research Products
(4 results)