2010 Fiscal Year Annual Research Report
出産・育児を通じた女性のSOC(首尾一貫感覚)の変化
Project/Area Number |
20592602
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
松下 年子 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (50383112)
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Keywords | 首尾一貫感覚 / SOC(sense of coherence) / QOL / 妊産婦 / 出産と育児 / 育児 / 精神保健 |
Research Abstract |
妊娠中から出産後1年までの首尾一貫感覚と気分状態、QOLの変化、さらにそれらの因子が相互にどのような関連しているかを把握すること、また、妊娠、産後、育児中の彼らが日々の生活の中で経験している感情体験を明らかにし、それらとSOCとの関連を考察することを目的とした。縦断的質問紙調査の継続とともに、これまでの質問紙調査に記載されていた感情体験に関する自由記載のデータを質的帰納的に分析した。 結果として、対象女性のSOC得点は妊娠時より、一般女性のそれと比較して明らかに高く、出産後4か月時点ではピークに達し、出産後1年時点においても依然高値であった。緊張・興奮、疲労感、抑うつは妊娠初期が最も強く、その後は軽減していくというパターンであった。不安は、妊娠初期よりもむしろ妊娠後期にて最も高かった。QOLは、出産直後が最も低く、その後は育児期間の経過と共に若干向上した。なお、出産後4か月時点のSOCを説明する変数としては爽快感、疲労感、不安、妊娠初期のSOC得点が認められ、妊娠初期の抑うつを説明する変数としては出産回数、治療疾患の有無、同居者の有無が認められた。出産回数の少ない人、治療している疾患がある人、また同居者がいる人ほど抑うつは高かった。妊娠後期の不安を説明する変数としては同時点のSOC得点、QOL得点、母親学級への参加回数が認められ、母親学級の参加回数が多い人ほど不安は高かった。最後に、自由記載の分析結果からは、対象者が妊娠・出産・育児中のいつの時点においても新たな自己を発見し、他の家族員や周囲の人の存在や支援に気づいて自身との関係性を洞察していた。さらにそれらを通じて「不安だけと嬉しい(楽しみ)」、「大変だけどがんばりたい」といった多面的、両価的な感情体験を得ていた。一方で、個別性の高い経験もあり、いずれにせよこのような、それまでとは異なる感情体験の連続が、SOC高値の維持に寄与している可能性が示唆された。
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Research Products
(9 results)