2010 Fiscal Year Annual Research Report
離島における順送りの崩壊と新しい相互扶助の構築からみた住民のQOLの検討
Project/Area Number |
20592627
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
大西 美智恵 香川大学, 医学部, 教授 (30223895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越田 美穂子 香川大学, 医学部, 准教授 (30346639)
片山 陽子 香川大学, 医学部, 助教 (30403778)
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Keywords | 離島 / 相互扶助 / QOL |
Research Abstract |
本研究は、順送りの崩壊が予測される高齢化の進んだ離島において、旧来からの相互扶助を補完する新しい相互扶助システム(地域通貨)の構築が住民のQOLに与えた影響を明らかにすることを目的とした。フィールドワークと既存資料の活用および、高齢者8名と小中学生を持つ母親6名にインタビューを行い、その結果を分析した。 高齢者にとって島の相互扶助は、世界が狭く人間関係の煩わしさがありながらも、助け合って生きてきた経験の中で、島が好きというポディティブな感情として根付いていた。しかし、急激な人口減少や高齢化の中で、将来への不安を抱きながら取り組んだ新しい相互扶助も、旧来からの島独自の相互扶助のなかで、十分な理解が得られず自然消滅した。ただ、新しい相互扶助の島民全体で組織する支援の形や考え方の芽は息づき、島民が運営するサロン『きないや』に引き継がれていた。一方、母親達の世代は、高齢者との世代間を超えた相互扶助について考え活動していくことの優先順位は低かった。合併後、急激に若い世代の数は減り、母親達も「ずっと島で暮らそうとは思わない」と語った。高齢化・過疎化の進む島といえば、高齢者の問題として捉えがちであるが、実は若い世代の疲弊が根底にあることが明らかになった。 新しい相互扶助システムの構築は、高齢者のQOLの向上には効果があったが、若い世代にとっては、旧来からの人間関係の煩わしさがネガティブな感情としてあり、効果があったとは言い難いという結果であった。ただ、島が大学生の福祉実習を受け入れていることは世代を超えて歓迎されていた。島民のみの世代を超えた相互扶助だけでなく、島外からの応援団も組み入れての新しい相互扶助システムのあり方も模索していく必要があろう。
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