2010 Fiscal Year Annual Research Report
慢性疼痛治療における神経伝達調節レベルの薬効評価に基づいた創薬基盤の創設研究
Project/Area Number |
20602004
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
田辺 光男 北里大学, 薬学部, 教授 (20360026)
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Keywords | 神経因性疼痛 / 一酸化窒素 / 脊髄スライス / SSRI / EPSCs / C-線維誘発性フィールド電位 / 中枢性感作 / SNRI |
Research Abstract |
1.我々は一酸化窒素(NO)が上位中枢において神経因性疼痛維持に関わることを示してきた。本年度はNO合成酵素(NOS)アイソフォーム及びNOの下流シグナルを神経因性疼痛モデルマウス(Seltzerモデル)を用いて検討した。脳室内投与したiNOS阻害薬は熱痛覚過敏や機械アロディニアを緩解したが、nNOS阻害薬は影響を及ぼさなかった。なお、同量のnNOS阻害薬を脊髄内投与した場合に神経因性疼痛が緩解することを我々は既に報告している。また、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)阻害剤のODQ、さらにPKG阻害剤のRp-8-pCPT-cGMPsの脳室内投与により神経因性疼痛が緩解されたことより、iNOS0を介して合成されたNOはcGMP-PKG経路により疼痛維持に関わることが明らかとなった。 2.後根を付した脊髄スライス標本において、ストロンチウムを適用するとAδ線維刺激において同期性の興奮性シナプス電流(eEPSCs)とそれに続く非同期性の微小興奮性シナプス電流(mEPSCs)が記録された。選択的セロトニン再取り込み阻害薬フルボキサミンはeEPSCsの振幅を抑制すると共に、mEPSCsの頻度を低下させたことから、一次求心性神経終末の興奮性伝達を抑制することが示唆された。 3.ラットin vivo標本の脊髄後角から記録するC-線維誘発性フィールド電位とその長期増強(LTP)に対して選択的ノルアドレナリン・セロトニン取り込み阻害薬ミルナシプランはLTP維持期においてのみフィールド電位を抑制し、basalレベルには作用しなかった。また、L5後根を切断して作製する神経因性疼痛モデルラットを用いたフィールド電位記録では、basalレベルのフィールド電位を強く抑制した。すなわち、中枢性感作後にのみミルナシプランはフィールド電位を抑制することが明らかとなった。
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