2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20605011
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
川村 健一郎 立命館大学, 映像学部, 准教授 (70454501)
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Keywords | 映画マネジメント / 映像学芸員 / 博物館・美術館 / 地域活性化 / コミュニティシネマ |
Research Abstract |
本年度は、昨年度に引き続き、文献を収集するとともに、国内のフィルム・アーカイヴの現状について、上映活動に企画者として参加し、調査を進めた。 フィルム・アーカイヴとしての博物館・美術館は、映画文化の保存の観点から、その機能を一層充実化させることが求められている。『紅葉狩』の35mm可燃性デュープネガが、2009年にフィルムとして初めて重要文化財指定されたことに現れているように、文化財としてのフィルムの保存は重要度を増している。可燃性のニトロセルロース、酢酸を放出して自壊していく(ビネガー・シンドローム)アセテートといった、脆弱な組成をもつフィルムの保存活動は、公共的支援を受けた博物館・美術館の重要な役割であると考えられる。一方、こうした博物館・美術館は、映画文化の普及の観点から、自館での上映だけでなく、他館への貸出や共同事業を積極的に展開することも求められている。東京国立近代美術館フィルムセンター(NFC)は、世界各地の映画祭やアーカイヴ、大学、劇場などにフィルムを提供するだけでなく、京都国立近代美術館での上映活動を共同主催している。従来の講堂にスクリーンを設置し、2か月に1度、NFC所蔵作品上映会が行われている(企画者として参加)。 9月には、山口情報芸術センターで開催された「全国コミュニティシネマ会議」にて、資料収集を行うとともに、会議に参加した全国の美術館、アートセンター関係者と意見交換を行った。現在、シネマコンプレックスを中心に、すでにDLP上映は一般化されつつあり、フィルムに限定されなくなった映画館が、商業的な枠組みの中で、その活動の幅を広げている。映画館が従来のあり方にとどまらない可能性を示しているのと同様に、「映像」を媒介に、アートセンターに接近しつつある美術館の上映活動が、今後どのような変容を蒙るのかが検討される必要がある。 次年度に、これらの資料や参与観察を土台とした論文を執筆する。
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