2010 Fiscal Year Annual Research Report
堆積物のキノン分析による過去の微生物群集変動の復元
Project/Area Number |
20606001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
沢田 健 北海道大学, 大学院・理学研究院, 講師 (20333594)
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Keywords | 芳香族キノン / バイオマーカー / 古環境変動 / 陸域古生態 / ビタミン / ジオポリマー / 堆積岩 / 深海掘削 |
Research Abstract |
前年度まで分析してきた堆積物中のイソプレノイドキノンに加え,芳香族キノンとその類似化合物に着目し,それらの組成から過去の特定の微生物の生物生産と移送・堆積量の年代変動を復元するための分析法を検討した。また,ケロジェン(ジオポリマー)に結合しているキノン化合物の切断処理やそれに伴う二次的な反応を検討するために,キノンとそれに類似するビタミンの既知標準物質を使った実験も行った。さらに,具体的に堆積層シーケンスに応用し,微生物の生産変動を推定した。平成22年度の研究成果は以下のとおりである。 1.中部日本の新第三系の浅海域堆積層において,遊離態成分としてアントラキノンなどの芳香族キノンや、キサントンなどの芳香族ケトン・ピランを同定した。芳香族キノン・ピランは陸源物質の割合の高い層準で高濃度に検出される傾向があることがわかった。これらは地衣類におもに由来すると推定され,それらの陸域での生産と海洋への移送を示すバイオマーカーとなりうることを提案した。 2.白亜紀~新第三紀の数種類の堆積岩中のケロジェンから結合態キノンを取り出す分析方法の検討を継続して行った。3弗化ホウ素(BF3)/ジエチルエーテル錯体を用いたエーテル切断法ではキノンが稀にしか検出されないという結論に至った。しかし,トコフェロールなどのビタミンは多くの白亜紀など古代堆積物からも検出された。深海掘削堆積物試料でも同様の結果が得られた。今後,ケロジェン結合態分子研究において,キノンよりもビタミンに注目して調査するべきであると指摘する。 3.キノンまたは類似したビタミンの標準物質を用いた検討実験の結果,フィロキノン(ビタミンK)やトコフェロールのBF3/ジエチルエーテル反応における二次反応生成物はほとんど生じないことを確認した。しかし,トコフェロールキノンは二次反応によって多くの分解物に生み,注意を要することを確認した。
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Research Products
(20 results)