Research Abstract |
前年度に南インドにおいて採取した岩石の記載を行い,鉱物中の包有物のRaman分光分析を開始した。また,研究対象の岩石を,北米,原生代グレンビル造山帯・アディロンダック山地のグラニュライト相変成岩に拡張し,巨晶ざくろ石岩の岩石記載,ジルコン分離,ジルコン中の包有物鉱物のRaman分光分析,およびジルコンの年代測定を行った。 南インド産試料の,ざくろ石などの鉱物中には,多量のCO2流体包有物が含有されていることが明らかになった。アディロンダック産試料からは,ジルコン中にもCO2流体包有物が含有されていることが明らかになった。また,ジルコン中には,現在の岩石基質中には観察されない,石英が多量に包有されていることが明らかになった。この観察に基づき,相平衡熱力学計算を行って,包有物がジルコンに取り込まれた時の,温度・圧力条件を見積ったところ,従来考えられていたよりも,高圧のエクロジャイト相変成作用の痕跡を発見するに至った。この巨晶ざくろ石岩におけるエクロジャイト相条件の発見は,本研究が始めてであり,調査地域の地質構造発達史の再考を要求する新しい情報である。以上の観察とジルコン年代測定結果より,アディロンダック地域においても,グラニュライト相変成作用時に,CO2流体が存在していたことが明らかになった。このことは,原生代の下部地殻におけるCO2流体存在の一般性を示唆する。 本年度の研究により,南インドおよび北米の原生代グラニュライト相変成岩中に確認したCO2流体包有物を用いて炭素同位体測定を行い,調査地域の構造発達史をふまえて,CO2流体の起源を議論するための,基本データを得ることができた。
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