Research Abstract |
20年度に南インドにおいて採取した岩石の記載を継続して行い,鉱物中の包有物のRaman分光分析を行った。また,典型的なチャーノック岩産地から採取した,チャーノック岩とその母岩の花こう岩中のジルコンを分離した。北米,原生代グレンビル造山帯・アディロンダック山地のグラニュライト相変成岩の巨晶ざくろ石岩のジルコン分離,ジルコン中の包有物鉱物のRaman分光分析を行った。 南インド産試料の,ざくろ石などの鉱物中には,多量のCO2流体包有物が含有されていることが明らかになった。アディロンダック産試料からは,ジルコン中にもCO2流体包有物が含有されていることが明らかになった。また,ジルコン中には,現在の岩石基質中には観察されない,石英が多量に包有されていることが明らかになった。この観察に基づき,相平衡熱力学計算を行って,包有物がジルコンに取り込まれた時の,温度・圧力条件を見積ったところ,従来考えられていたよりも,高圧のエクロジャイト相変成作用の痕跡を発見するに至った。この巨晶ざくろ石岩におけるエクロジャイト相条件の発見は,本研究が始めてであり,調査地域の地質構造発達史の再考を要求する新しい情報である。この成果を,論文にまとめ,投稿準備中である。 本年度の研究により,南インドおよび北米の原生代グラニュライト相変成岩中に確認したCO2流体包有物を用いて炭素同位体測定を行い,調査地域の構造発達史をふまえて,CO2流体の起源を議論するための,基本データを得ることができた。
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