2010 Fiscal Year Annual Research Report
視覚中枢原基の神経上皮幹細胞は間期に神経前駆細胞に転換する
Project/Area Number |
20610005
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
中尾 啓子 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70338185)
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Keywords | 神経上皮幹細胞 / 神経前駆細胞 / Drosophila / Notch sigualing / 細胞接着装置 / 細胞周期 / 増殖 / 分化 |
Research Abstract |
これまで我々は、哺乳類神経上皮幹細胞から前駆細胞へと分化する際の分子制御機構を明らかにするモデル系として、ショウジョウバエの視覚中枢原基に存在する神経上皮幹細胞を選び、それらが細胞周期特異的-神経上皮幹細胞において特異的に延長しているG1期に-神経前駆細胞に転換することを明らかにしてきた。そこでこの転換機構を制御している分子メカニズムを明らかにするために、Notch signalingの関与について解析した。Notch signalingが神経上皮幹細胞と神経前駆細胞の増殖を促進し、かつ神経前駆細胞からニューロン・グリアへの分化を抑制することは、これまでの我々の研究で明らかにしているが、神経上皮幹細胞から神経前駆細胞への転換の分子機構に関しては、哺乳類を含めて何も明らかになっていない。実際ショウジョウバエ視覚中枢原基の神経上皮幹細胞においても、その神経前駆細胞への転換プロセス中の細胞は、G1期であるためBrdUを取り込まない上に、細胞接着装置の、細胞極性の再構築が起こるのだけが指標でbHLH型転写因子のAsenseが転換後半に徐々に発現してくること以外には適当な分子マーカーもなく解析が困難だった。本年度はNotch signalingの活性化の指標であるsu(H)遺伝子のプロモーター支配下でβ-gal遺伝子を発現するレポーター遺伝子の発現を調べることでNotch signalingが神経上皮幹細胞から神経前駆細胞への転換の直前に活性化され、直ちにダウンレギュレートされることを明らかにした。さらにNotchの機能欠失突然変異体のクローンを作成することで神経上皮幹細胞の転換直前にNotch signalingの活性が上昇できない様にするとNotch signalingのリガンドであるDeltaの異所的な蓄積が起こり転換プロセスが早まる事がわかった。以上のことからNotch signalingの活性化が転換直前の限定された時期に起こることで神経上皮細胞から神経前駆細胞への転換のタイミングが正しく制御されているのだと言うことが示唆された。
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